月別アーカイブ: 2017年3月

勇気を出して!

新しい患者さんとの初めての対面は、

ベテランの私でも緊張するのですよ。

女性の患者さんがほとんどなのですが、

最初は恥ずかしがられて、

なかなかお口の中を視せて頂けません。

ご本人もよ~く判ってらっしゃるようです。

歯医者にお口の中を診せないでどうするん?

勇気を出して!

さぁ!

皆さん、お悪いから此処にいらっしゃるんですよ!

で、

やっと開けて下さると云う塩梅です。

決して恥ずかしがることはありませんよ。

私の仕事ですから。

ほ~ら!

この女性患者さん。

 

本当は歯は1本もありません。

30代の後半の方です。

今日、

頑張った甲斐あり、

下の歯が入りました。

大きくお口を開けて観せて下さってマスでしょう?

この方、目頭が涙いっぱいになって、

手鏡を覗いておられました。

先生、ありがとう、ありがとうって、

何回も何回も。

序でに、

感謝の気持ちですって、

小さな小袋を手渡されたのです。

私も、

目頭が熱くなりました。

 

あの日を生涯忘れない

人は一生の内に、

消えない記憶を強烈に刻まれる経験する

機会が数回在ると言われています。

私の受けた6年前の記憶は、

同じように生涯消えることはありません。

あの日の、

1秒1秒の自分の表情、所作、想い、

自分のすべてが、

遊離した魂が自らの身体を

客観的に眺めるように、

手に取るように鮮明に覚えているのです。

で、

結局の処は、

頬に涙が伝わるのみです。

恐らく私は精神的付加を大きく受け

未だに傷は一向に癒えてはいないと感じています。

波が怖い。

時たまテレビの画面に流れる地震を報せるテロップに、

小刻みに身体が震えています。

私の息子は幸運にも、

生き抜くことが出来ました。

大勢の犠牲になられた方々に、

申し訳ないと云う想いと、

怒りと哀しさをぶつける場を知りません。

息子には、

大切に此れからの人生を歩んで欲しいと、

生きたいと叫んでも、

力尽きた方々も多いのですから、

せめて真面目に、その方々の分まで、

生きている感謝を重く感じながら、

時々、

立ち止まる心で居て欲しいと思います。

私も、あの日に産まれ代わりました。

歯の治療にだけ、

人生を捧げる決意をした日です。

被災者の方々のお心を想うと、

言葉になりません。

亡くなられた多くの御霊の御冥福を

私は、

あの日から毎日、仏前で掌をあわせて祈りを捧げています。

 

 

矛盾

あと20年も経たない内に、

歯科治療は悲惨な状況になろうかと思います。

テクノロジーの進化?によって、

人の手から離れた人工歯が

普通に患者さんの口に入る時代になるでしょう。

それは便利じゃないかと、

お感じになられるかもしれません。

が、

歯科医学の特殊性から、

メーカーの目論見通りいくほど

咀嚼器官は単純な構造ではありません。

しかしながら、

資本主義の倫理観にて、

私ら医療人の正義は敗北するでしょう。

カメラで撮影した歯の画像とCT画像をリンクし、

一見、入れ歯擬き、クラウン擬きの人工物は出来るでしょうが。

私らが100年以上費やして、

築き上げた職人芸に勝る製品が出来る筈がありません。

しかし、

悲しい哉!

職人芸はテクノロジーの前に平伏す羽目になるに違いありません。

その頃、私は隠居するか、死んでるか、

良かったと、

思います。

人が機械に負ける姿を観たくありませんから。

小売り店が次々とシャッターを下ろし、

ネット通販で、

何から何まで揃えると云うのが

普通になったのだそうです。

私には考えられない時代です。

24時間営業のコンビニの存在が当たり前になったように、

これからの普通が、

私には予想出来ません。

便利さと、

良いこととが、

一致する処と、

どうしても無理が生じる処と出てくるでしょう。

そんな難しい矛盾に満ちた問題解決能力は

私には備わっていないとだけ申し上げましょう。

 

インプラント専門の強味

何処の歯科医院でも扱うように一般的になった

【インプラント治療】ですが、

私らのような専門の医院との違いが、

一般の方には判りにくいと思います。

一言では言えませんが、

やはり長い間、

それなりの修羅場を生きてきた経験的勘とでも言いましょうか?

同じ手順での治療ステップを踏んだ治療を行う事はありません。

コレは下顎に1本も歯のない患者さんの模型です。

インプラントが4本入っています。

このインプラントを支えとして、

物干し竿のようなバーを渡して、

上の総入れ歯をクリップで固定する設計です。

この際の技工手順の一端です。

連結する金属の熱による収縮と、

石膏模型が固まる時の収縮を

補正するための、

洋服作りに例えるならば【仮縫い】作業みたいなモノです。

技工師の造った技工物と、

実際の骨の寸法がピタリ!と、

ミクロンの狂いもない精度でと。

マニアックな話しですが、

この辺りが、私らの強みです。

流行りより、確かな治療方法

文献を頂きました。

審美歯科の治療方法についてです。

イタリアの歯科医師の仕事でした。

この文献を根拠としての【モノ真似】治療が

拡がることでしょう。

私ですか?

採用しません。

何故って?

セラミッククラウンを装着直前の歯茎には

炎症が在ります。

視る観点が、

この歯科医師とは違うのだと思います。

また私の専門は歯科保存学です。

歯科保存学の基礎的分野の1つに歯科理工学が在ります。

歯科理工学を学んだ者であれば、

この方法にて造られたクラウンの予後は容易に判断できます。

私は、【誰がこう言った】より、

【私の治療から得た結論】を重視します。

無論、

新しい治療方法の取り込みは生涯、続くでしょう。

が、

目新しい不確かな治療に、飛び付くほどお人好しではありません。

 

私の診療所

私は1日に診療する患者さんの数を、

最大7人と決めています。

其れは、

患者さんに使用する機材の滅菌の限界だからです。

この辺りの根拠の詳細は、

昨年末の週間ポストや週間現代が特集を組んで

丁寧に解説していましたので、参考にして下さい。

また診療台を治療で使った後、

直ちに次の患者さんを座らせるのは、

不潔極まりない暴挙でしかありません。

消毒などやホースの取り替えなどで

少々準備に時間を要します。

医療機関において最も大切な事は、

院内感染の防止です。

その様な意味合いで、

私の診療所の規模と経費との兼ね合いから、

1日に最大で7名と算出されたのです。

週刊誌にも確かに同じ数であったと記憶しています。

ただ7名まで診察できる日は少ないと云うのも現実です。

治療内容によっては、

凄く時間を要する患者さんが多いのですもの。

1日に1人や二人って日も多いのですよ。

1日の診療の内容にはメリハリを付けています。

特に神経をすり減らすマイクロスコープを使う根管治療は1人だけで、

ギブアップです。

根管治療の後の患者さんには、

入れ歯の歯の型を採ったり、

詰めて行う治療と云うよりも、

造作的センスを要する治療を入れています。

で、その後の治療には、

神経を遣う手術を、

で、その後の患者さんは抜歯などの比較的簡単な治療をと、

云う工夫しています。

歯科医院において大切なのは、

高水準に至る治療を常に提供できる事です。

そのような意味で、

私の診療所は日々進化し続けています。

マイクロスコープの醍醐味

今しがた上の第2大臼歯の根管治療を行っていました。

2時間くらいでしょうか?

疲れない?

患者さんの側はどうなんでしょう?

眠って居られるようですが。

私ですか?

ラバーダム防湿下での治療ですから、

顕微鏡をズット覗いているので視野は明確です。

端から観れば、

手先だけ動かしているだけに

観えるのでしょう。

私自身は、無我の境地ですね。

根の先の骨の組織まで視えるのですよ!

根の内側の汚れも鮮明に視えます。

夢中で、

歯の内部の掃除にと云う塩梅です。

で、

根の先の孔にまで、

細そ~い器具を使って、

MTAセメントを直接運んで、

孔を閉鎖しました。

眼球は、確かに疲労困憊に。

が、

充実感には代えられません。

だって、

この歯、長持ちしますモノ。

父息子

最近になって久しぶりに息子が帰って来ました。

ガールフレンドに振られたのだそうです。

本人曰く。

消化できたのだと。

私ですか?

ニコニコ聞いてました。

で、

良かったじゃないかと。

春です。

この季節には、

出会いと別れが織り混ざりながら花満開を迎えます。

息子にも春が訪れたのだと。

これからは、

満面の笑みを浮かべて飲む酒、

悔し涙を流しながらの酒、

淋しさに膝を抱えて飲む酒の味も覚えるでしょう。

それで良いのです。

そうやって大人の男の顔になるのです。

ただ、

爪先だけは1歩、

前へ前へと歩みを留めないこと。

進んでこそ日本の男です。

父たる私は、

黙って、

息子の杯に灼してやって、

さぁ飲め、

もっと食べろ、

ただそれだけしか出来ませんが。

 

引っ越し

これからは大学へ通う手段は飛行機と新幹線で、

宿もホテルにてゆっくりと、

と、決めたのです。

それほど体力が低下した事を寂しく思います。

診療についてだけは、

体力、気力、

一向に衰えを感じません。

ただ、自己調整できる歳になったから

とも言えるからかもしれません。

先日、生活の拠点である高松市に加えての新潟市の住まいを、

神戸へと引っ越しました。

雑踏の街は好みません。

芦屋の山の手の静かな街へと引っ越したのです。

なだらかな六甲山の麓の

川在り、窓から瀬戸内観える希望の場を見つけたのです。

私は高松市の診療所にジッと鎮座し、

患者さんを次から次へと捌いてゆくタイプの医者ではありません。

上手く説明は出来ません。

が、

私には私なりの働き方と云うモノが在るのです。

【細か仕事】を更に徹底し、

身体の仕組みの解明に取り組むのが、

私の大切な人生での時間です。

モチベーションが下がるなど、

私には問題外の外です。

日頃の暮らし様すべてが、

歯の仕事に役にたつためだけ。

それが私の幸福感なのですから、

私は私の流儀で続けてゆくのです。

 

チョッと一服

今年は犬を伴って、

アチコチ旅をしようと思っています。

犬の方では迷惑かもしれません。

が、

私と一緒に居ることが、

犬にとっては幸せな時間だと、

勝手に解釈しています。

旅と言っても犬と一緒では、

ホテル、旅館に泊まれる訳ではありません。

最近では犬同伴の宿も増えましたが、

其れも限りが在り、

何時でも思い立った時に

即座に使えるほどの便利さは未だありません。

30代からハマったモータホーム。

何台乗り換えたか判りません。

コレを引っ張り出して、

再び使おうと思い立ちました。

早朝の海岸や森林にて、

飲む珈琲は、

例えインスタントであっても美味しいモノです。

思い返せば、

良く働きました。

次の一手への仕込みの手当てが必要な歳になりました。

まだまだ歯の研究は続きます。

其れは大きな大きな楽しみでもありますが、

神経と身体を傷める重労働でもあります。

チョッと一服。

そんな余裕が心に出来たんでしょうね。