月別アーカイブ: 2014年3月

インプラント治療を受けるにあたって その9.

【インプラントを受け入れる部分の骨について】

歯がない部分にインプラントを入れる場合に注意しなければならない事があります。

骨の幅が小さい場合には、入れるインプラントも当然の事ながら幅の小さなものになります。
しかしながら、幅の小さなインプラントは折れやすい事を忘れてはなりません。
また、骨が痩せてしまって幅が小さくなった場合には、細いインプラントを入れたら上物の人工歯との形態的、力学的な不調和が生じます。
ですから、骨の幅が小さい場合には、インプラントを入れる前に、骨の幅を厚くする手術が必要です。

骨の高さが少ない場合、これも骨が痩せて、その様になるのですが、骨の高さに沿った長さのインプラントを入れる様になります。
しかし、噛む力を支えるには長いインプラントの方が有利であることはお判りでしょう。
この様な場合に於いても、骨の高さを増大させる手術をする方が安定した成績が得られるでしょう。

大きな大きな噛む力を生涯に渡って支えるインプラントです。
太くて長いインプラントが断然有利です。

気軽にチョロッと感覚でインプラントと云うのは誤りです。
慎重に考えて下さい。

細くて短いインプラントなどは簡単に入れる事ができますが、手術に際して思わぬ事態が発生した時に
緊急処置が難なく出来る歯科医師は、長くて太いインプラントを選択するでしょう。
その時に、骨の幅や高さが足りない場合には、難なく骨の増大手術を奨めると思います。

インプラントを入れる際に、十分な幅と高さのある骨を獲得してから安全なるインプラント手術に挑むを奨めます。

春到来

昨日、テレビのニュースをボンヤリ眺めていたら、瀬戸内地方に【桜開花宣言】が出されたそうです。

そのような宣言なるものが在ったのだと思いながら、それでも何故か心暖まる想いがしました。

自宅の前の最近完成した市街地にしては広目の公園の桜の枝にも、確かな春の予兆が認められます。

日中は春休みと云うことで親子ずれで賑わい、カラフルな洋服や帽子で、淡いピンクの小さなつぼみは見落としがちになりますが、
夜明け時や日暮れ前の閑散となった空間では、確かな春の主張を感じます。

もうじき鮮やかなピンクに眩しい程の春を感じさせてくれる事でしょう。

インプラント治療を受けるにあたって その8.

フラップレス.インプラントと云う手術方法があります。

インプラントを骨の中に入れ込む手術の際に、粘膜を切開して開くことなく、
ドリルで直接、粘膜の上から孔を開ける手法を用いる手術です。

利点は、粘膜を切り開く事が無いので、患者さんの受けが良く、腫れも少ない事です。

が、大きな落とし穴があります。

骨の上には粘膜があります。
この粘膜には厚みがあり、実際の骨のテッペンは粘膜を剥離していないので手術中には見えません。
ですから、インプラントを入れるにあたって、インプラントの最上部が完璧に骨で被われているのかの確認が出来ません。

インプラントの最上部は、細菌感染の入り口です。
完全に骨に覆われていないといけません。

手術前に予めCTを撮影して手術用のガイド.マウスピースを作製して、骨のテッペンを予め把握して
手術を行うと云う方法も紹介されています。

理屈としては面白いのですが、実際には現状のCT機器の解析能力では、骨の微細形態は認識できません。

近代歯周病学の父と唱われるイエテボリ大学のリンデ先生は次の様に述べられています。

ー 私は実際に自分の眼で確認した骨の形、質しか信用しない ー

インプラント治療を慎重に行うとするならば、私はやはり、フラップレス.インプラントはお奨めできません。

喫煙について その1.

医療人であるにも関わらず私は喫煙しています。

紙巻きタバコ、葉巻、パイプ、煙管の全般に渡って、私はたしなんでいます。

クラブ、ラウンジの類いには行きませんが、東京、大阪の或いはニューヨークでもシカゴでも、
クルーズした時には必ずシガークラブへと出掛けて行って葉巻を燻らせるのが私の楽しみです。

私が初めて煙草を手にしたのは二十歳を過ぎてからでした。

今まで色々な煙草を手にしましたが、自分の好みを見つけたのは、
自分なりの楽しみ方を見つけたのは、この4,5年と云った処でしょう。

何事にもマナーと流儀は必要であると私は思っています。

昨今の嫌煙一色の時代のなかで、特に私の様な医療に携わる人間の喫煙は、とても肩身の狭い想いがします。

確かに煙草が健康に悪いと云う様々な研究報告がある事は知っていますが、
それは本人の責任下での事でしょう。

但し他人に迷惑をかける環境での喫煙には、無論Noであることは間違いありません。

私の患者さんにも喫煙者はいます。

治療の成績と喫煙の因果関係についての説明は行いますが、
禁煙するか否かは、大人ですから本人の問題だと思っています。

煙草と云うのは、大人の男のたしなみの1つだと思っていますので、
私はご婦人の喫煙は、好みません。

非常に偏った見方をするトンでもない人間と感じられるかもしれません。

私は本来、男と云うものはこういうものだと思っています。

喫煙による癌の発生率よりもCT被曝による危険性を考えると、
また何よりもストレスによる疾患発生率の高さを考えると、
堅いこと言うんじゃねぇヨ!もっと楽に考えたら!と思ってしまいます。

海外の著名な医師や歯科医と夕食を楽しんだ後、
決まって彼らが口にする台詞。

ー ドクター!シガークラブへと出掛けて一服しようや! ー

今日から社会へと羽ばたく娘へ

晩秋の星の耀く越後の大地で生を賜った娘は、ある時までは父の最愛の宝物でした。

越後を去り行く雪の夜に、娘を抱き抱えて宿から見下ろし眺めた萬代橋の姿を父は今でもわすれません。

幼い娘を伴って、たびたび訪れた異国の光景と、初めて目にする異国情緒に驚く娘の表情を父は今でもわすれません。

小学校に入学し、見送る父の姿を何度も振り向き確認する娘の大きなランドセル姿を父は今でもわすれません。

塾通いの娘を、車の中で何時間も待っていた父が、これ程までに気が長かったとは今でも信じられません。

我が道を歩く父に反抗する娘の選択を、父は責める心もなく、娘の選んだ道を見守る気持ちは今でも変わりません。

父はずっと、目には見えぬ娘を見守っていました。

娘の姿は、父の中ではあの日のままで、その姿を1日に何度も脳裏に浮かんで過ごしてきました。

今日、娘は稲門より出でて、世間の荒波へと第一歩を歩み出し始めます。

耐えがたい不条理なこともあるでしょう。

情けない想いに、胸が張り裂ける機会もあるでしょう。

そんな時に思い出して下さい。

いつの日か、貴方が後ろを振り返った時には、必ず貴方の歩いた足跡が残っているのだと。

その足跡がどの様なものであったとしても、残せた事が大切なのだと。

父の力は微々たるものでしかないが、

幼い頃に言い聞かせた様に、困った時には父は何時も、娘の肩の上で護っていることは今でも、これからも変わる事は無いでしょう。

娘よ。

苦しい道を選びなさい。

他人の眼など気に留める事はない。

貴方の信じる道は正しい道。

転げ落ちても、頭を打っても、それは必ずや貴方の肥やしになるでしょう。

羽ばたく娘を、老いたる愚かな父はずっと観ているから。

貴方の生まれた越後に流れる大信濃の緩かな流れのように、貴方の時間も確実に進みゆくのだから。

急ぐことなく、大陸に向かって、風に逆らってでも、頭を垂れて、歩いて行って下さい。

娘よ。

何処に生きても貴方は父の娘。

日々の臨床で感じること その1.

若い頃、自分が年老いた頃を想像して何よりも怖れた事と云えば、
時代遅れの歯医者になって、若い歯科医に脅かされる自分の姿でした。

私も速いもので、もう五十を過ぎてしまいました。

幸いにも、ありがたい事に、若い歯科医の技量なり診断力を怖いと感じた時はありません。

むしろ、もっとじっくりと治療に向き合ったらどうかね!と若い歯科医に対して感じる事がしばしばです。

何事も、基の基をたどって考えて観てはどうかね!と感じる事がしばしばです。

小手先の小細工では、歯科の慢性疾患のコントロールはできません。

フッ素塗布とPMTCの繰り返しで、本当に皆さんの口腔が健康になったでしょうか?

ひと其々に質と云うものがあります。

その質を見極めて、見逃さないで治療方法を見つける事が何よりも肝心な処でしょう。

今では自分の仕事が精一杯で、他の歯科医の事などには全く無関心になりました。

歯の世界と云うのは、宇宙の様に広くて、いくら時間があっても足りません。

インプラント治療を受けるにあたって その7.

インプラント治療の費用については、これからインプラントをとお考えになっておられる方には大いにご関心のある事と思います。

インプラントと一言に言っても様々なインプラントがある事を、先ず知っておかなければなりません。

コストを軽減するためには、材質を純チタン製からチタン合金へと、また構造を複雑なものから単純な設計へと変えなければなりません。

世界シェアの大きい海外ブランドである三大メーカーのインプラントは、
骨の中に入るフィクスチャーと呼ばれる部分と歯肉を貫通するアバットメントと云う部分、そして人工歯の3ピース構造になっています。

対して廉価なインプラントでは一体化構造の単純化されています。

何故その様なインプラントがあるんだ?と問われましても、それを望む需要と供給のバランスから、
または市場原理が働いているのだろうとしか言いようがありません。

いずれにしても、この様な二種のインプラントを価格のみで勝負しても、
三大メーカーのインプラントには勝ち目がありません。

インプラント以外の処では、単純にご説明しやすいのが技工料金です。
通常の場合、インプラントの技工料金は普通の歯の場合に比較して約1.5~2倍位は割高となります。
また、製作する技工士の技術料には、大変大きな差があります。
やはり上手な技術士は値段に見合う製作物を造ります。

それから歯科医院サイドでの価格差は、お判り難いかもしれませんが凡そ次の事が考えられます。

手術に関わる滅菌コストの差。
手術室の有無による設備コスト。
治療にまつわる人的コストと時間コストの差。

インプラント治療と云うのは一種の移植治療です。
私は治療をする側ですから、説得力に欠けるかもしれませんが、
手術室も無い一般診療室で、忙しなく簡単にインプラントを奨める歯科医院は信用できません。

また、これは私の個人的私見ですが、1日でインプラントの手術から噛めるようになりますと唱うワンデイ.インプラントを宣伝する歯科医院も
私はお薦めできません。

色々な論文や文献がありますが、その文献、論文の出所と生の成績を再確認すべきでしょう。

歯をより良い状態で長持ちさせる努力を感じる歯科医院の方が、インプラント治療の成績も良い様です。

普通の歯の治療も確りと出来ない歯科医が、何故インプラント治療の名人、達人になれるでしょう?

百円寿司と数寄屋橋次郎のお鮨を比較するのは無意味でしょう。

私自身としては、低価格で勝負の歯科医院のインプラント治療は高いと思っています。
価格に見合う治療成績は、到底望めないと思います。

良い歯科医とは その2.

良い歯科医に成ろうと思って30数年も経ちました。

上手に成ろうと、仕事においては相当、自分自身に厳しく過ごしてきた自負はあります。

10年前の自身の仕事より5年前の仕事の方が、
5年前の仕事より去年の仕事の方が良い仕事をすることが出来たと実感しますので、
このまま私が精進し続ければ、恐らく今年より来年の方が、そして来年の仕事より5年後の仕事の方が
上手になっているでしょう。

その様な訳で、私は今の自分の腕に自信がありません。

私は他の歯科医との、どっちが上手いの腕比べには全く興味がありません。

歯科の仕事は職人仕事。
自分自身と向かい合う性質の仕事だと思っています。

私も無論、誰からも好かれたいとは思います。

しかしながら、私自身の個性を活かす仕事に徹すれば徹る程に、悩みが増えていきました。

患者さは素人でらっしゃるのですから、先の先までの予測は出来ません。

あえて患者さんの耳に痛い事を言わなければならない時もあります。

その辺りを良くご理解頂ける方と、全く無関心、あるいは私に敵意を向ける方もおられます。

この様な時に私は、良い歯科医とはどのような歯科医なのかと自分に問いかけるのです。

反省を繰り返しながらも、ただ言えます事は、私は胸に手を当てて、
自身に恥じ入る仕事はしないで今日まで過ごせた事に、
これが良かったのか悪かったのか判りませんが、
その様に歯の仕事に向かい合ってきたと云うことです。

これからも私は、良い歯科医とはと自問自答を繰り返しながら、
患者さんと向かい合っていくのでしょう。

インプラント治療を受けるにあたって その6.

随分と一般的になったインプラント治療です。

しかしながら、一口にインプラントと言っても材質から耕造に至るまで様々な多種多様に渡っているのをご存じでしょうか?

チタン製インプラントが通常使われる様になりました。

但し、チタン製といっても実際には、純チタンとチタン合金とがあり、これ等を比較すると全く違います。

ブローネマルク博士やアルブレックソン博士で有名な様々なチタン製インプラントと骨との結合を述べた研究結果は
すべて純チタン製インプラントによるものです。

純チタンは正にピュアなチタンですから混ざりけがありません。

が、チタン合金のものは様々な金属をブレンドしていますので、純チタンの性状とは違った挙動を示します。

なぜ合金のインプラントが増えたかと云えば、その理由はズバリ2つです。

1つは、価格を低く出来るため。

2つめは、機械的物性が強くなるためです。

はっきりと云うと、強くて折れにくいインプラントを安く造るためです。

それは良い事じゃないかと思われるかもしれません。

ここに大きな落とし穴があります。

生体に無害な金属は少ないと云うこと。
金属はイオンが溶け出して、あっという間に、その金属イオンが体内の臓器に到ってしまいます。
仮に溶け出したある金属イオンが、その患者さんにそぐわなかったならどうなるのでしょう?

何事にもホドホドと云う言葉があります。
確かなインプラントメーカーから供給されるインプラントは、最近の自動車や航空機のように
セルフ.フェィリァーの機構を備えています。

インプラント本体と骨との結合を守るために、強すぎる圧力や、予期せぬ方向からの圧力が加われば、
構成する部品のネジが緩んで、患者さん自身や歯科医に、その兆候を報せる仕組みとなっています。

あんまり便利すぎるインプラントを安く提供する事で、
本来であれば技術的に未熟な歯科医も簡単にインプラント治療に手が出せて、
序でに自身の技術的未熟さを感じないで誤ったインプラント治療を続けてしまう事になるでしょう。

最近、インプラント治療の負の部分がマスコミ等で報道されていますが、これが正にこの事でしょう。

良い歯科医とは その1.

商家に生まれ育った私ですが、自ら望んで歯科の道に入りました。

大学の合格発表で、附属学校前の掲示板に自分の受験番号を見つけ、嬉しくて大学前の富士見坂をかけ降りて
外濠の橋を渡り、神楽坂を公衆電話を探して走った30数年前の記憶を今でも鮮明に覚えています。

歯科医師国家試験に合格したあの日に、良い歯科医に成ろうと決意した自分の表情も未だ忘れる事はありません。

ずっと良い歯科医に成ろうと思っていました。

但し、良い歯科医とはどのような歯科医なのか、今でも結論づけは出来ていません。

深い人間洞察力を備えた温かな人柄を兼ね備へ、人の哀しみを自身の事のように判る事ができる医師。

でも、歯科医は技術者でありますから、腕が人より良くなければ話しになりません。

診断力も優れて良い治療方法を決定出来なければなりません。

診療所を管理する立場であれば、徹底した感染防止対策を整えて、患者プライバシーを守り、
より優れた医療機関との連携を採れる関係を構築出来なければなりません。

なん十年も、この業界で生きてきた私ですが、良い即ち優ると云う事であれば、
全ての諸般に渡って上へ上へと目指さねばなりません。

一言で言うは簡単ですが、良い歯科医とは即ち、私の理想像でありましょう。