月別アーカイブ: 2017年9月

父ちゃんの仕事だもの

夕方、

息子がブラリと帰ってきました。

今朝早く帰った行きましたが。

歩いて、

焼肉屋へと。

学生ですから金がないのでしょう。

肉は久しぶりだと言いながら

黙々と肉を口に運ぶ姿を観ていました。

チョッと遠くまで来すぎたねと、

歩いて帰る道すがら、

男同士の会話ができるようになりました。

テーブルの上に、

帰宅してから一緒に一杯やった

ジャックダニエルのボトル。

私の好みを間違いなく受け継いでいるようです。

昨日は忙しい1日でした。

新患の方の手当てに、

一生懸命で。

上顎全体に9本のインプラントが埋入され、

大型のブリッジで修復されておられました。

下顎の片方の奥歯部分に、

2本のインプラントが。

そこにはセラミッククラウン。

他の部分も歯は全くありません。

簡単な部分入れ歯で修復していました。

噛めない!

痛い!

臭い!

と云うのが、

患者さんの苦しみでした。

通常はレントゲン検査と血液検査のあと、

次回、

じっくりと診るのですが、

お口の中を拝見し、

【勘働き】が一瞬!

緊急性を感じたのです。

レントゲンから、

インプラントの種類は判定できますので、

ドライバーを用意して、

ブリッジを壊さないように、

丁寧に取り外します。

左奥歯部分のインプラントは全滅でした。

ブリッジと一緒に骨から簡単に取れました。

ブリッジは両端を手で押すと、

ガタガタします。

汚れきったブリッジを、

スタッフに綺麗に清掃して貰う間、

私は顔面の計測に取り組んでいました。

このような症例においては、

頭蓋骨の基準点から、

噛み合わせの基準線を決定しなければなりません。

これは総入れ歯でも同じです。

顎の型を採ったり、

色んな手当てで、

お昼休みも潰して、

3時からの患者さんまで、

診査項目の漏れがないように、

ハンターの眼のようであったに違いありません。

診療室に就いた息子が開口一番、

父ちゃん、眼が充血!

それが父ちゃんの仕事だもの。

今年後半の難症例の到来ですから。

紳士の嗜み

師匠が若い先生方に仰られていました。

自分が若い頃、

師匠から受けた躾。

これは歯科医学だけに限った内容ではありません。

トイレは違う階のトイレを使え!

よもや患者さんと並んで

用をたすなどと云う

ハシタナイ真似はするんじゃない!

電話を切る際には、

受話器を置くな!

手で、

静かに受話器受けを押しなさい。

今はこのような電話はありませんが。

他所で用をたした際には、

便座の裏まで、

眼を皿にして、

汚れとシミを拭いてから。

無論、

何十年か昔、

私も同じ台詞を聞きました。

師匠は更に言われます。

歯科医師は紳士の嗜みであれ。

言葉つかいも、

英語も綺麗な英国英語でと。

綺麗なものに触れること。

などなど。

師匠と並んで歩く際に、

私は誇らしいですもの。

癒しの人

この人を観れば、

なんだか癒し気分になるって

そういう人って居ませんか?

日本歯科大学新潟病院副院長の黒川教授が、

正にその人でしょう。

クラウン系の研究、臨床家です。

訪問診療のパイオニアであり、

エキスパートでも在ります。

天皇陛下からご拝謁を受け、

その功績を誉めて頂いた方です。

が、

決して恐い歯科医師ではありません。

ダラッと白衣を纏い、

当然、

前のボタンは開けっ放し、

白衣が肩からズレていても

気にも介せず、

私の顔を見つけると、

顔をクシャクシャにしながら

歩みより、

シッカリと肩を組んでこられ、

なぁ三枝!

どう最近?

今夜飲みに行く?

先生の一方的ペースで事は運びます。

こういうお人柄ですから、

逆に頼まれごとされても、

断れません。

中堅の医局医など私が恐くて堪らないのだそうな。

でも、

私は叱ったことはないのですよ。

保存学の新海教授から言われました。

三枝は観た目が恐い。

そうでしょうか?

これでも若い女性には人気があるんですが。

私の生真面目さが、

決して誘いにはのらず、

週間文集が恐くて恐くて堪らない。

真面目に反論する私を、

大笑いで、

そんな先輩方に囲まれています。

 

スイッチ

私が根管治療の再治療をすべきと

診断を下す症例には、

確たる根拠が

自分の中で在ります。

同じように、

諸般の観点から再度の治療はすべきでない。

その根拠も自分の中で確立できています。

これを丁寧に説明しても、

専門家でなければ、

判らないと思います。

どうなるか?

まぁ、とにかくヤってみて、

ご様子観ましょう。

このような言葉を使っていた時代が、

私にも在りました。

再度の治療を望む患者さんに、

いくら説明申し上げても、

患者にとっては、

することが最重要要素であるからです。

治療するということは、

その歯の状況が、

更に詳細に判る訳です。

先ずは、

治療の範疇を越えるまで、

前医の介入が大きく、

傷痕は手当ての限界を越えるいることを

否応なしに、

眼で、

触覚にて、

証明されてしまうのです。

治療行為よりも、

ソッと、

歯の寿命まで、

見守るべき症例も稀には在ります。

昨日の新患の患者さんの歯のなかは、

無秩序な方向性のない処置の最中に在りました。

それでも、

一筋の光明が微かに観えたのです。

ここで、

観ることから、

診ることへと、

私の脳髄のスイッチは変換したのです。

 

職人ですもの

30歳の未婚女性がお越しになりました。

歯の神経を採った後、

詰めもの?をして、

違和感が残り、

再度、

その歯科医院を受診したら、

根が腐っているので痛いのでしょうと言われ、

再び、

根の治療を始めたそうな。

次回に根の治療が終わりますと云う段階になっても

痛みが残り、

不安になって、

私の診療所へお越しになられたと云う次第です。

私はお喋りです。

が、

聞き出し上手でも在ります。

患者とのコミュニケーションが

治療の第一歩だからです。

高松市で一人暮らしであるそうな。

と、

治療したる歯科医師が、

私の教え子であることも知ったのです。

昨日の新患の方は、

診察し、

お話ししてみて、

私はお役にたてないと、

お断りしました。

幾らでも払いますからお願いしますと

仰られたことも、

私の地雷を踏まれたのです。

私はハサミではありませんと申し上げました。

歯科医師過剰の時代ですから、

名医はイッパイ居られるでしょうから。

今日の患者さんの治療は

責任を持ってお引き受けしました。

が、

私も同じ年頃の娘を持つ父親です。

一人暮らしで、

カツカツの生活でしょうに。

ですから、

夕方の5時にお越し下さいと。

その時刻なら、

普通は帰る準備する頃ですから。

特別な治療方法は必要の無い症例です。

普通に治療すれば、

痛みも消えるし、

歯も残せます。

アポイントメントも、

間隔を開けて、

生活費を圧迫させないように、

そんな心情になるほどの、

本当に歯で困っている程度が

津々と伝わったのです。

ラバーダム防湿を施し、

マイクロスコープで歯を覗き、

根管の中を探ってみました。

恥ずかしながら、

教育効果が奏功していないと、

私はレントゲンを診て感じた想いを、

再度、

強く認識しました。

私の手で治して差し上げようと。

偏屈者と思われるかもしれません。

だって、

私は職人ですもの。

 

一次医療

75歳の女性です。

約12年前に、

全顎にわたるインプラント治療を終了した患者さんです。

3か月に1度の割合にて、

メンテナンスにお越しなられています。

ご主人を見送り、

40歳過ぎた障害を持つお嬢様と一緒に過ごされています。

この数年、

聴覚が少々、

そんな気持ちで、

お話しする際には、

大きな声で、

耳元で、

そんな風に接していました。

長い間、

診察してきた患者さんです。

今日は気になって、

勇気を出して申し上げました。

私が申し上げるのもナンですが、

お耳が気になるんです。

今日は滑舌も少々、お悪いんで、

どうですか?

先生、そうなんです。

友人から補聴器も進められたんです。

迷っていました。

私は答えます。

今まではご様子診てたんですが。

滑舌が気になりました。

此処の部分は私の専門と被りますモノで。

先ずは耳鼻科にて如何でしょう?

その上で、

次回は一月後にお越し下さい。

滑舌が、

どうしても気になるモノで。

総入れ歯の患者さん等では、

長い間お使い頂いてるんですが、

80を過ぎた辺り位の時に、

上の前歯の裏辺りの人工の歯茎部分を

少々、

調整するんです。

滑舌が一気に良くなるんです。

インプラント修復においては、

極々マレなんですが。

私の専門分野で解決できるのならば

手当てするんですが、

先ずは、

医科領域からと。

耳鼻科、次いで脳外科あたりの

検査を優先すべきと判断したのです。

私は、

水際作戦に、

終夜奮闘しています。

仕事の学び方

大勢の若い歯科医師が

私の話しを聞きに、

こんな田舎街の診療所へとお越し下さいます。

その中でも特に私が眼をかけているのが、

東京吉祥寺開業の小出 明医師です。

彼が忙しいのを承知で、

月に1度の割合にて、

日本歯科大学は東京の飯田橋に本校が在りますが、

彼には、

新潟校の保存学教室の新海航一教授のもとで、

トレーニングを受けることを指示したのです。

新海教授は私と息子の主治医です。

ですから、

新海教授に対する私の中での歯科医師としての評価の高さが

お分かりになられるでしょう。

新海教授は寡黙な人です。

謙虚な人です。

が、

細かい性格も、

これは病気の域とも言えるでしょう。

私とは6歳違いです。

私が歯科大学に入学した際に、

新海教授は新人医局員になりました。

ご自身の研究のための、

人間モルモット?として私は患者になりました。

そういう訳で、

新海教授とは長い付き合いです。

近い距離の関係ですから、

私が大学院生として医局に入った際には、

先生なりの姿勢での指導を受けました。

当時は講師であったと記憶しています。

当時の先生の指導は、

極めて厳しいモノでした。

怒ることはありません。

が、

ネチネチ?

ご本人がこのブログを見たら

アノ野郎!

と怒るかもしれません。

しかし、

よくもまぁ!

と思う位に、

細かな処まで、

指摘を受けました。

私ですか?

反論はできません。

その通りでしたから。

医学を学ぶ者は、

自分の【いたらなさ】と【未熟さ】を

素直に自覚して、

欠点をひたすら修正することが

最も大切な姿勢です。

私の現在の仕事は、

初期に、

新海教授から指導を受けたことが幸いしています。

そういう訳で、

次代を担うエースになられるでしょう

小出医師には、

新潟へ通うことを指示したのです。

良い歯科医師を作ることは、

私らの仕事でもあるのです。

 

生命歯学部

メンテナンスを自らの強い意識にて、

積極的に取り組んで下さる患者さんって、

本当は少ないものです。

恐らく、

大勢の患者さんは、

ただなんとなく、

そんなモノか、

そんな感じで、

歯科医院へとメンテナンスに通っておられるのでしょう。

先週の週末の出張まえのこと、

ご夫妻共に私の長い間の患者さんであるE氏は70歳男性。

某協会の会長職を務めておられ、

多忙な日々をお過ごしのなか、

月に1度は必ず、

自らの強い意識にて、

歯科衛生士による口腔内のクリーニングと、

私の噛み合わせチェックに、

お越しになられていました。

で、

今回のメンテナンスの際に、

私は【匂い】を感じたのです。

歯周病や胃の臭いではありません。

健康上の、

何か何時もと違う違和感を感じたのです。

私は患者さんとの雑談を好みます。

その際に、

私は患者さんの全体像を、

然り気無く、

診ているのです。

ご本人には自覚はないようです。

で、

私は奥方に電話したのです。

どうか私が手配しますから、

某私立医大附属病院へ受診させて下さい!

奥方が即座に反応されました。

ヤッパリ!

先生、私も感じてた。

主人が言うことを聞きません。

明日も明後日も協会のゴルフに行くと。

先生からも強く言って下さい!

こういう場合、

長い間の患者さんは、

私の【勘働き】を絶対に信用してくださいます。

ゴルフをキャンセルされ、

私の指定した大学病院へ向かわれました。

電車を乗り継いで、

もう少しと云う処にて、

異変がE氏を襲ったのです。

電車の中から奥方からの電話が入ります。

先生、主人が変です。

即座に大学病院の救急部へと連絡を入れ、

救急隊と連携を取り、

最寄りの駅の駅員さんも万全の受け入れ体勢を整えられる中、

電車から救急車に乗り換えられ、

医大附属病院にて、

緊急手術を受けられました。

脳内出血による広範囲のクモ膜下血腫があったようです。

宿に着いた頃、

奥方から手術成功の一報を頂きました。

昨日、再び、

奥方からお電話を頂きました。

何故、先生がこの病院にコダワッタのか、

全般、判りました。

パンフレットにあった建学の精神とおりの

治療体制と看護を受けています。

ありがとうございます。

日本歯科大学は学部の名称を、

歯学部から生命歯学部へと変換しました。

歯は身体と連動している。

歯だけを見て、

人と云う生命体を診えない歯科医師は作らない。

それが学長先生の強いお考えであるからです。

学部長は全身管理科の藤井教授です。

日本歯科大学は医者の眼を持つ歯科医師教育へと

舵をきりました。

超高齢社会を迎える中での、

歯科医師教育のためです。

私も、

その空気の中に身を置いています。

あぁ、一人の人生のお役にたてたことに、

母校の教育方針の意味を身をもって経験したのです。

 

時代の移ろい

英国は2040年までに、

ガソリンとディーゼルエンジン製自動車の

製造と輸入を禁止する決定を下したのだそうな。

時代は急激に変化しつつ在ります。

これに中国も追従する様相。

大排気量のフォード製トラックが好きな私は、

戸惑いました。

超高齢化社会を初めて経験する地球です。

近い将来私も、

その仲間入りする訳です。

いつ終わるのか判らない老後を、

実体験する訳です。

と言って、

死ぬのは恐いものです。

息子に言いました。

父ちゃんが死ぬ瞬間に、

メモしておくから、

聖母マリアさまの言葉を、

耳元で、

繰り返し、繰り返し、

唱えてくれぃ!

俺は気づいたのじゃ。

意識がなくても、

聴覚は生きている筈だと。

その際に、

怖がりの父ちゃんが、

不安で、不安で堪らんだろう時に、

般若心意じゃ、

父ちゃんは癒されんこと。

マリアさまの言葉は、

父ちゃんは何故か落ち着けるんじゃ。

ええな!

息子ですか?

テープレコーダーになった積もりで、

繰り返してくれるのだそうな。

安心しつつ、

若い人には理解できないのだなと。

親友の浅見博士に問うてみました。

彼は解剖学の教授です。

君は死ぬのは恐くないのかぃ?

恐いに決まってるじゃないか!

安心しました。

彼曰く、

死ぬ瞬間には、

恐らく脳内から大量のモルヒネのようなホルモンが分泌され、

痛くはないんじゃないかと。

私は尋ねます。

誰に聞いたんじゃ?

これだけは、

経験者に聞けないから、

俺は信じんなと。

君の父上は何と仰られてるんじゃ?

私は浅見博士の父上を尊敬しています。

親父かぃ?

毎日、死ぬのが恐いと言ってるわぃ!

歯科医師として極められた彼の父上は、

禅宗の仏門に帰依されていることを知っています。

ふ~ん?

ガソリン車は絶滅するでしょう。

それを人類、

そして自分と重ねるのです。

 

師匠の言葉

朝、

内藤正裕先生と電話にて会話。

週末のお礼と、

正直な私の心情とを。

師匠曰く、

必ず自分の位置の意義が判るからと。

相変わらず、

師匠は難しいことを言われます。