月別アーカイブ: 2017年1月

プロの仕事

今からインプラントの埋入手術です。

私の使うメスは、

柄の部分も替刃も特殊なモノです。

一般には入手出来ません。

メスの中に、

私の指先からの神経が伸びて入り込み、

手先とメスが連続して動く所作に至るまで

随分と長い年月を要しました。

先程、若い歯科医師の先生を

電話にて注意した処です。

ある治療方法についてなのですが、

私と彼は一昨年の冬に一緒にトレーニングを受けました。

この治療方法は私にとっては普遍なモノとなりました。

彼は優秀な歯科医師です。

前途有望な歯科医師です。

ですから私は付き合っています。

必ず最前線で患者さんのお役に経って欲しいと。

彼からの電話で、

その治療をまだ採り入れていない事が判り、

大いに注意したのです。

新しい治療方法は、

いきなり本番で使用してはならないと思うのです。

普遍な日常の何気ない治療の一部に、

少しずつ、少しずつ、

新しいエッセンスを加えて行き、

時間をかけて、

素材の癖を体得しなければなりません。

患者さんは実験台ではありません。

【プロの仕事】

の重みを認識して欲しいと、

言葉はキツかったでしょうが、

可愛い後進です。

その辺は理解しているでしょう。

普通に普通にこなす。

コレがプロの仕事です。

生まれ変わる

先の東北大震災の年の大晦日の日だったと記憶しています。

この頃公開されていた役所広司さん演じる

【連合艦隊司令長官 山本五十六  】の映画を、

信濃川沿いの映画館へと観に行きました。

大スクリーンの中での、

役所広司さんの演技に魅了されました。

【師を凌駕出来ない弟子は不幸である】

というレオナルド.ダ.ビィンチの言葉を思いだし、

役所広司さんが師である仲代達也さんを

完全に凌駕した類い稀なる幸運な弟子であると感じて、

あぁ本当に良い役者だと大いに満足感に浸ったのです。

スクリーンでの山本元帥と役所広司さんが

完全に一致して、

私は思ったのです。

私も、この様な人で在りたいと。

山本元帥も人の子です。

どちらかと言えば、

喜怒哀楽の感情豊かな人だと思います。

が、

不条理な境遇においても、

納得出来ない時にでも、

怒りに震える心を燃やす瞬間においても、

瞬時に、

自分の感情を抑制して、

笑顔に切り換える。

役所広司さんの顔の皺の変化や、

眉の動き、

瞳の挙動は、

真に迫る名演技だったと記憶しています。

その年の東北大震災の直後に現地に居た私は、

今でも決して消えない大きな傷が

心に、

脳裏に、

残っています。

今、思いますに、

私は、あの年に生まれ変わったと思います。

何もかも壊れた果てた大地と、

魂を失った傷痛ましい人体の累積に、

大きな叫びの声を挙げた私。

魂の脱け殻のようになる程に、

行く方向を見失いがちになりながらも、

生きるために、

患者さんの診察に追われる毎日。

そんな時の、

あの映画は、

私に何かを決めさせた瞬間だったと。

私は、あの様な人になりたい。

それが、

一歩、一歩、

歩みを取り戻したキッカケだったと思います。

やせ我慢の連続です。

自分を封じ込んで、

歯の番人に徹しています。

その頃からでしょうか?

歯の声が鮮明に耳に、

目に入るようになりました。

最近、しばしば患者さんから言われます。

先生は丸くなったと。

中身は全く変わりません。

心に熱い情熱を封じ込んでいます。

が、

患者さんから言われる度に、

よし!

上手く演じられているな!

と。

それからは、

以前よりも増して、

患者さんが愛しく、愛しく、

思うようになりました。

患者さんに、

あぁありがたい、

ありがたいと、

益々感謝の気持ちが強くなりました。

ご恩返しは、

私が一層の精進する事だと、

明確に生きる方向が定まりました。

短いようで長い人生です。

生まれ変われた私は本当に幸運だと

またまた感謝、感謝し、

患者さんへ、

元気な顔をみせて

おはようございます!

と、

白衣をまとっています。

骨との会話

無事に手術を終える事が出来ました。

スーパー難症例でした。

粘膜を開くと、

骨がビッシリとインプラントを包みこんでいました。

解剖学的に危ない症例でした。

骨にも【癖】があることを、

インプラントを植え込む前に

気づいていました。

3ヶ月前に手当てした骨は、

私を嘲笑うような表情をしていました。

その際に私は骨に頭を垂れて、

私の手当てを受け入れて欲しいと

お願いしました。

骨と会話する等と、

とうとう頭が狂ったと、

お感じになられるかもしれません。

宮大工の棟梁が、

森の木と会話するという話しを

聞いたことがありました。

私は判るように思います。

本当にありがとう、ありがとうと、

骨にお礼を云う私に二心はありません。

患者さんへも、

【越乃雪】も渡す事が出来ました。

小さな小さな和三盆の塊ですが、

同じ素材でも、

京の雅な味わいではなく、

越後の国ならではの【個性】に、

私は舌の上に暖かみを感じるのです。

内科医をする患者さんですが、

帰宅する車中にて、

甘い味わいに、

痛みと手術の恐怖から

解放して欲しいと願うのです。

次の患者さんも、

また骨と会話しようと

楽しみにしています。

歯のキチガイと言われても構いません。

私は同じ歯科医師からの評価のために

仕事をしている訳ではありません。

私の仕事は、

歯の番人に過ぎませんので。

責めんでくんなせぃ

患者さんからの頂き物の機会も多く、

本当にありがたいと、

感謝して過ごしています。

今日の午後からの手術は、

徳島県からの女医さんです。

常々、

盆暮れに、

先生の思案が伝わる心暖まる頂き物に、

とてもとても嬉しく頂いて来ました。

症例としては、

スーパー難症例である先生を前に、

私は緊張の連続であり、

本当に多くの事柄を勉強させて頂きました。

手術の後は、

患者さんの側も疲労が放散します。

お食事する気持ちにも、

直ぐにはならないでしょう。

丁寧な手術に徹するのは当たり前です。

が、

他にも何かして差し上げたいと思いました。

手術の後、

ご自身の運転で帰宅されるとの事。

私の好きな新潟県には、

日本三大銘菓の1つが在ります。

【越乃雪】です。

DSC_0361

この菓子の素材は阿波の国、徳島県からの和三盆です。

これも何かの縁と思い、

新潟から送って用意したのです。

歯医者が患者さんに菓子などと、

でも、

美味しいモノを食べる幸せを

私が大切に感じていますので、

その辺は、

私を責めんでくんなせぃ。

 

何故わかるン?

今日も新しい入れ歯を

掌の上から

患者さんに差し出しました。

一通りの調整が終わって、

ー  先生はインプラントの先生なのに、

何故、私の言いたい事がわかるン?ー

と。

さぁ?どうしてでしょうかね?

歯や歯茎がモノ言いますから。

と、お応えする私。

ー   もう今まで他では言っても言っても解ってくれなくて、

で、

最後はコッチが根負けしてたんです   ー

私らの業界に【生涯研修】という言葉が在ります。

思うに、

これは学会や研修会に参加する事ではありません。

無論、それはそれで刺激になるでしょうから

大切な生涯研修の極々一部でしょう。

私の生涯研修とは、

普遍な日常の過ごし方だと考えています。

繊細な眼で、

謙虚な心で、

感謝の気持ちで、

丁寧な丁寧な手当てに終始する。

そこから学ぶ処が大きいのです。

治療から得た結果から、

工夫に工夫を重ねて、

より丁寧な方法を探す事。

仕事の合間には、

手先の鍛錬と併せて、

手先の手当てに励み、

眼と脳髄は、

海外からの研究論文に向ける事。

他人の臨床報告には意識して眼を反らす事。

それが華麗な治療に見えても、

10000に1つの成功からしれませんし、

その10年先の姿は見えませんから。

古典的な治療の予後の方が、

最新治療よりも宝の山で在ることに、

気づいて欲しいのです。

その様な基礎体力の強化の上で、

患者さんの口の中に、

勉強の問と答えが、

ミッシリ詰まっている事に、

早く早く気づいて欲しいのです。

若い歯科医師の先生方が、

大勢、私の診療所を訪ねて下さいます。

どうぞ、

生涯研修について、

私らの身近な処が、

生涯研修そのものである事に、

気づいて欲しいのです。

決めたこと

瀬戸内海に浮かぶ小豆島に

尾崎放哉の住んだ庵と墓が在ります。

私はこの場所が好きです。

【咳をしても独り】

【茶碗が無いから両の掌で掬う?】

?の句は正確ではないかもしれません。

尾崎放哉の代表作だそうです。

文学を熟知しない私でさえ、

これらの句から、

グッと来る迫力に圧倒されます。

孤独感の冷たさと

人との繋がりからの暖かみの

極端な心境を一瞬に座布団のなかに

仕舞いこんだ技に、

あぁコレがプロの作品だと感心します。

庵の周囲を無縁仏が取り囲んでいる佇まい。

時々、

赤い小さな前掛けを持って、

色褪せた無縁仏の前掛けを交換に行くのが

私の年中行事となりました。

18の歳からです。

見馴れた風景ですが、

歳を経る毎に、

感じ方が変わってきた様な気がします。

仏様の前の石段に腰をおろして、

煙草の煙の向こう側の連なる石柱に、

日常を語りかける自分を可笑しく思います。

石柱の人の生きた当時の名前も姿見も

私は知りません。

が、

何千と連なる仏様に、

私は親近感を感じて何十年も過ごして来ました。

人生の節目節目に、

掌を合わせて、

お願いしたり、

お礼を伝えたり、

近況の報告をしたり。

血こそ繋がりはありませんが、

私にとっては、

人生の共同同伴者で在ったことに間違いありません。

だから、

私は歯科の仕事を誠実に全うしたいと、

決めているのです。

 

人間味

私は毎日、歯の問題を抱える患者さんと接しています。

ご本人は何気なく仰られているのでしょうが、

頻繁に耳にして苦笑いさせられる【決まり文句】が在ります。

歯医者は嫌い!

そんな時に、

私も歯医者なんですが、そんなに嫌わないで下さいよ。

歯科医師なら、みんなが同じ経験された事でしょう。

そんな時に私は思うんです。

それ以上に、

私になら託しても恐くないと、

患者さんに絶対的な安定感ある歯科医師で在ろうと。

治療技術の向上、知識の更なる習得は勿論です。

それが大前提の上で、

患者さんの全てを包み込む

大きな大きな羽を持つ親鳥のようになりたいと思います。

いつもニコニコして、

明るい【気】を放散しましょうと、

私の身体は小柄ですが、

シッカリと根っこを地面に張った根性を、

瞳の中には燃える情熱の火を灯し続けていようと。

診療室のドアを開けて、

患者さんにご挨拶する寸前に、

両の掌で、

頬をパシッパシッと、

自ら叩いて【カツ】を入れて、

三枝尚登から歯医者へと、

切り替えています。

私は歯医者で在り続けたいと思います。

私は人情豊かな男で在りたいと思います。

やせ我慢の連続です。

それでも私が望んで選んだ仕事ですから。

シツコイ位に【ナイチンゲールの心】

週刊誌に、

こっ酷く叩かれる位に悲惨な歯科業界ですが、

これは歯科医院が増えて不景気だからという理由付けは

大きな間違いだと思って観ています。

と言うのは、

私が小学生の頃にも、

また中学生の時分にも、

歯科業界はマスコミから叩かれているのを

覚えているからです。

当時は、

保険治療と自由診療の差額請求での

不明瞭会計が大きな問題だったと記憶しています。

また歯科医師不足にて、

3時間待たされての治療は3分というのも、

叩かれる理由の1つでした。

その結果、

国は致し方なかったのでしょう。

雨後の筍のようにドンドンと、

歯学部を新設した結果、

今日のように歯科医師過剰問題が生じて、

歯科医院間の過激な競合が始まったのです。

医師よりも歯科医師が頻繁に叩かれる理由の

本当の処を見極めなければ、

歯科業界の明日は無いと言えるでしょう。

歯科医師は命のやり取りに関わっていないのが理由では?

という意見を耳にした機会がありました。

私は賛同しかねます。

医師であっても、

日常的に命のやり取りに関与している分野は

限られています。

一般の内科外来、

耳鼻咽喉科、

眼科、

皮膚科、

心療内科などは、

救急蘇生の必要に迫られた際に、

心臓外科、

麻酔科、

救急救命科の医師と同等のレベルでの

的確な手当てが出来るのでしょうか?

では理由をどう考えているのか?

と、問われれば答えに窮します。

医療倫理観に欠ける医師を

私は大勢に存じ上げています。

私の考えですが、

歯科疾患の特殊性が大きな原因だと思います。

歯科医学は自然科学の1分野という事ですが、

本当にそうなんでしょうか?

掴み処のない分野、

それが歯科医学だと思います。

本来は他の分野と比較しても、

複雑な状況下での治療であるのですが、

数字で系統的に証明しづらいのが

歯科医学だからです。

また歴史的な歯科医師のルーツが、

仏具師から派生した入れ歯師というのも、

医師よりも低く思われる理由だと思います。

料理の世界でも、

建設業界においても、

手抜きする不心得な輩は大勢いることは、

偽装問題が後を絶えないことからも、

同じだと思いますので。

患者さんにお願いしたいのです。

もっと、もっと、

歯に関心を持って下さい。

もっと、もっと、

歯を大切に思って下さい。

それが現場の歯科医師を大きく育てるキッカケになります。

また、

キチンと手当てできる手先と知識と、

人間愛を併せ持つ歯科医師か、

それとも、

単なる金儲けの権化かどうか?

見極められますから。

私は医師に身体を任せる際には、

あらゆる方向から、

その医師を観察します。

医師に対しては、

私は自分の知識を語る事はありません。

相手は当に熟知済みという前提でなければ、

私は自分の身体を託しません。

最後に何を青臭い事をと、

お思いになられるかもしれませんが、

医療人の絶対に必要な性格として、

ナイチンゲールの心だと云うことを

お伝えしたいと思います。

歯科治療は協力作業

こんな事を申し上げますと、

ビックリされるかもしれません。

私の診療成績は100パーセントではありません。

不良な転帰をとる場合もあります。

予想できれば、

当然、他の方法を選択して失敗を回避します。

しかし身体の仕組みの全てを把握できる訳ではありません。

最善を尽くした積もりでも、

此方の思惑通りに進まない症例がある事は事実です。

その様な状況に遭遇した際には、

私は患者さんに事実の詳細を隠さずにお伝えし、

燃える闘魂で、

問題解決に全力を注ぎます。

日頃の修練の成果を

今、全力で注入する時だと。

歯科医学の性格上、

未解決な事柄はとても多いのです。

材料の素材の進歩が逆に、

身体に過度の負担を掛ける場合も多いように思います。

最先端は、逆に長期経過症例がないという事も、

併せて考慮に入れなければなりません。

コミック漫画の【ゴルゴ13】に憧れます。

【100発100中】のプロになりたいと望むのですが、

野球選手であれば3割でも、

首位打者としてエールを贈られる事を

羨ましく思うのです。

何処の歯科医院のホームページでも、

あの自信満々の言葉の根拠は、

何処から来るのだろう?

と。

私は謙虚で在りたいと思います。

患者さんのお役にたつのであれば、

どんな事でもいといません。

実際、その様に日々を過ごしています。

それでも奥が深すぎる歯科治療です。

トンでもない世界に入ってしまった!

と、後悔はありませんが、

何事もなかった事に、

安堵し床に就く、

それが本音での私の1日の終わりです。

ですから、

どうぞ皆さん、

歯を大切にして下さい。

治療に際しては、

私は一生懸命に取り組みますから、

ご協力して下さい。

歯科治療は、

私ら歯医者と患者さんとの、

協力作業ですから。

患者さんとの会話

中学校の教師を長らくお勤めになって居られた男性が、

定年を待たずに早期退職されたとの事でした。

イヤー先生、疲れ果てました。

親が学校に乗り込んで、

もう警察を呼ばねば収拾つかない時代ですから。

教育の意義を見失いましたし、

職責への情熱の何もかも。

今は安気なモンです。

この際、徹底的に歯を治そうと思いましてね。

私ら素人目には、

何処の歯科医院が良いのか判りませんし。

人の評判も当てになりませんことは、

私もこの年ですから、

その辺は心得ている積もりです。

インターネットでも真剣に知らべました。

ですが結局は、

先生には申し訳ありませんが、

博打でした。

でも生徒や親や上司との関わりから

観る目が在ったと思ってます。

先生も偏屈者の頑固者で、

私は毎回、ここに来るのを楽しみにしています。

今度どうですか?

焼き鳥でも一緒に如何ですか?