瀬戸内海に浮かぶ小豆島に
尾崎放哉の住んだ庵と墓が在ります。
私はこの場所が好きです。
【咳をしても独り】
【茶碗が無いから両の掌で掬う?】
?の句は正確ではないかもしれません。
尾崎放哉の代表作だそうです。
文学を熟知しない私でさえ、
これらの句から、
グッと来る迫力に圧倒されます。
孤独感の冷たさと
人との繋がりからの暖かみの
極端な心境を一瞬に座布団のなかに
仕舞いこんだ技に、
あぁコレがプロの作品だと感心します。
庵の周囲を無縁仏が取り囲んでいる佇まい。
時々、
赤い小さな前掛けを持って、
色褪せた無縁仏の前掛けを交換に行くのが
私の年中行事となりました。
18の歳からです。
見馴れた風景ですが、
歳を経る毎に、
感じ方が変わってきた様な気がします。
仏様の前の石段に腰をおろして、
煙草の煙の向こう側の連なる石柱に、
日常を語りかける自分を可笑しく思います。
石柱の人の生きた当時の名前も姿見も
私は知りません。
が、
何千と連なる仏様に、
私は親近感を感じて何十年も過ごして来ました。
人生の節目節目に、
掌を合わせて、
お願いしたり、
お礼を伝えたり、
近況の報告をしたり。
血こそ繋がりはありませんが、
私にとっては、
人生の共同同伴者で在ったことに間違いありません。
だから、
私は歯科の仕事を誠実に全うしたいと、
決めているのです。