日別アーカイブ: 2017年2月16日

【違い】が判る患者さん

嘗て私の診療所にて修行した歯科技工士の今の仕事を

新しい患者さんの口腔内所見から観る機会が在ります。

私が手解きしましたので、

製造者名を記していなくても判ります。

其れが職人と云うモノです。

が、

月日の経過と技量の進歩が決して比例しない事も

判りました。

情けない想いになります。

本人の努力不足と怠慢の賜物か、

私の指導が悪かったのかは判りません。

が、

当の私は進化し続けていますから、

私は不思議でなりません。

また、

この様なセミプロの域でしかない仕事の

見分けもつかない歯科医師の観る眼の無さにも

驚きを通り越し、

私は完全に舐めています。

私の患者さんの歯には入れられませんので。

入れ歯についても、

なぜ噛めない入れ歯しか造れないのか判りません。

素人目からすれば判らないでしょうが、

私の患者さんには【違い】が判るようです。

私はそんな患者さんに支えられています。

 

指先

昔から指先が器用だと言われていましたが、

当の私はその自覚はありませんでした。

歯科医師になってからは、

意識して手先のトレーニングに努めていました。

其れは自分の手先に自信が無かったからです。

私は運が良かったと思っています。

若い時分から、

著明な先生方に可愛がって頂きましたので。

ですから余計に、

自分の手先の未熟さを自覚出来たんだと思います。

当時のテキサスのメローニック先生やボストンのネビンズ先生

カリフォルニアのソケット先生。

手術の名人でした。

若い私はぶっ飛んだモンです。

クラウン修復はキム先生。

凄まじい気迫でクラウンの調整されておられました。

で、

其れは科学の理にかなったクラウンが在りました。

インプラントはブローネマルク博士。

インプラントの精神的支柱が其処には在りました。

そんなこんな環境でしたから、

自然と自分の無力を知り、

謙虚な気持ちと、

チャレンジ精神、

相反しますように見えますが、

歯科への情熱が在ったから、

進む道を失わないで来れたんだと思います。

ただ最近、

私の診療所へお越しになられる患者さんの治療痕跡を観て、

皆、下手くそだなと。

申し訳ないのですが、

技術的足腰の弱さしか感じられません。

時代でしょうか?

大工さんも同じ事仰っておられました。

そうかもしれません。

私らの幼い頃には、

男の子はみんなが【肥後の守】という小刀ナイフを持っていました。

鉛筆削るのも、

工作するのにも自らの手で削っていました。

そんな環境が、

手先の下準備になっていたのでしょう。

歯周補綴

昔の歯医者の方が

謙虚で技量も上だったと感じています。

歯をクラウン修復した際に、

歯周病の症状を発現させ、

歯茎と骨に炎症を起こさせ、

その結果、

自らの手で治療したクラウン修復が長持ちしない原因を

科学と手技から検証したのが、

今から40年ほど昔の事でした。

ペンシルベニア大学のアムステルダム先生の提唱した

【歯周補綴】と云う造語は余りにも有名です。

補綴と云う単語は歯科医学では一般的です。

入れ歯やクラウンなどの人工物によって、

歯の形や噛み合わせを再現する治療です。

歯科医師が日常に行っている治療です。

この補綴と云う単語に歯周と云う単語をくっ付けた

【歯周補綴】とは、

歯周組織を壊さない補綴治療と云う意味です。

補綴治療では当時は、

トーマス先生が著明でしたが、

歯周補綴のトップランナーとして

レイモンド.キム先生の名前は余りにも有名です。

私を含めて、

私の師匠である内藤正裕先生などの多くの臨床家は

キム先生から大きな影響を受けました。

歯周補綴の洗礼を受けた私らは、

幸運な時代に生きたと思います。

その後、時代はインプラントと審美歯科へと移り、

歯周補綴の概念は置き去りにされた感が在ります。

歯周補綴の実際は、

とても繁雑で複雑な治療手順から成り立っています。

流れ作業の歯科治療に馴れた歯科医師には、

とても手が出せる手順ではないからです。

歯周補綴の出来る歯科医師は希少となりました。

昔ながらの大工の仕事みたいですから。

私の診療所が難しい症例の宝庫と言われるのも、

各地から歯周補綴を求めての患者さんが多いからです。

昨日の新しい患者さんも、その1人です。

歯科医師の入れたクラウン修復によって

歯茎と骨に炎症が起こっています。

正に歯科医師が造った歯周病と言えましょう。

正しい手順にて歯周補綴を行って、

再び歯周組織の健康を取り戻す事が出来ます。

すがる様な表情で私を見つめる患者さんですが、

私は心配していません。

其れは私が歯周補綴のプロであると

自覚していますから。