昔の歯医者の方が
謙虚で技量も上だったと感じています。
歯をクラウン修復した際に、
歯周病の症状を発現させ、
歯茎と骨に炎症を起こさせ、
その結果、
自らの手で治療したクラウン修復が長持ちしない原因を
科学と手技から検証したのが、
今から40年ほど昔の事でした。
ペンシルベニア大学のアムステルダム先生の提唱した
【歯周補綴】と云う造語は余りにも有名です。
補綴と云う単語は歯科医学では一般的です。
入れ歯やクラウンなどの人工物によって、
歯の形や噛み合わせを再現する治療です。
歯科医師が日常に行っている治療です。
この補綴と云う単語に歯周と云う単語をくっ付けた
【歯周補綴】とは、
歯周組織を壊さない補綴治療と云う意味です。
補綴治療では当時は、
トーマス先生が著明でしたが、
歯周補綴のトップランナーとして
レイモンド.キム先生の名前は余りにも有名です。
私を含めて、
私の師匠である内藤正裕先生などの多くの臨床家は
キム先生から大きな影響を受けました。
歯周補綴の洗礼を受けた私らは、
幸運な時代に生きたと思います。
その後、時代はインプラントと審美歯科へと移り、
歯周補綴の概念は置き去りにされた感が在ります。
歯周補綴の実際は、
とても繁雑で複雑な治療手順から成り立っています。
流れ作業の歯科治療に馴れた歯科医師には、
とても手が出せる手順ではないからです。
歯周補綴の出来る歯科医師は希少となりました。
昔ながらの大工の仕事みたいですから。
私の診療所が難しい症例の宝庫と言われるのも、
各地から歯周補綴を求めての患者さんが多いからです。
昨日の新しい患者さんも、その1人です。
歯科医師の入れたクラウン修復によって
歯茎と骨に炎症が起こっています。
正に歯科医師が造った歯周病と言えましょう。
正しい手順にて歯周補綴を行って、
再び歯周組織の健康を取り戻す事が出来ます。
すがる様な表情で私を見つめる患者さんですが、
私は心配していません。
其れは私が歯周補綴のプロであると
自覚していますから。