日別アーカイブ: 2016年6月1日

三枝塾

私は、この十年来、歯科医向けの講演はしていません。

ですから、開業医が定期講読する歯科の商業雑誌記事も研修会の広告もしてません。

10年ひと昔と言います。

池波正太郎先生の【剣客商売】と主人公で秋山小兵衛の隠居生活に憧れて、

歯科医との係わりを避けて来ました。

私の講義は、日本歯科大学の講義のみ。

あとは好きな研究や、

毎日の診療のレベルを向上するので精一杯でした。

家と診療所と大学の間だけ。

そうこうする内に、

露出の頻度が減りますから、

若い歯科医は、雑誌の広告程度しか興味ないのでしょう。

診療に関係ない研究などはおろか、

英字での論文などは全く読まないでしょう。

若い歯科医は、私の名前を知らない人も多くなり、

時には唖然とする態度をとる年少の無礼な歯科医もいます。

それでも大学での仕事の積み重ね、

歯科が大好きと云う類い稀なる若き歯科医も増えているのでしょう。

色々な場所で、私の【三枝塾】は始まります。

メーカーも事務局の労をとって下さったり、

地方地方でも、其れなりのお声がけを頂いています。

私は若い歯科医と患者さんのためなら、

なんでもする積もりです。

お金は持って死ねません。歯科への恩返しです。

あり得ない話

昭和の時代から、

コレが同じ国なのか !と、

良い面、悪い面の共に

変わってしまった日本の国の普遍です。

先日、空港の書店にて面白い本を見つけました。

【数寄屋橋治朗】の解説書です。

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体裁は、表向き外国人向けのガイドブックでした。

それなのに、

親切に【日本語訳】も併記され、

はハーン!

コレは!と。

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マナー知らずの勝手なお客ってのは、

何処にでも迷惑を懸けるんだなと。

どの店にも、

その店の【やり方】ってのがありますから、

それが気に食わないなら、

他所のお店へ行けば良いのです。

その方が、

お店側も嬉しいのです。

マナーの知らないお客は、

お店にとってはお客ではなく、

ただの迷惑者でしかないのです。

そんな野暮な人が増えたって事でしょう。

回転寿司と鮨屋は、

私は区別しています。

と言って、

回転寿司は回転寿司の価値は認めています。

変にねじ曲げて解釈されては困りますので。

恐らく、国語教育が悪いんでしょう!

それと、ゲーム。

だから、本の活字離れが進んで、

日本語の理解出来ない人が増えたんでしょうね。

トップの度量

私が常々スタッフに対して、口酸っぱく言う台詞のひとつ。

【患者さんのことで、私の耳障りの悪い事だけは伝えて下さい】

仕事に夢中のあまり、

想わず配慮に欠けることが無いとは言えません。

また、考え方の違いから生じる、

また、私の説明の言葉足らずから生じる、

私と患者さんとの間の【ボタンのかけ間違い】ほど

愚かなことはありません。

私は患者さんが大切で大切で堪りません。

誤解ほど恐いモノは無いのです。

その様な時に私は、

スタッフからの報告に対しては、

自分の意見は一切言いません。

【判った。ありがとう】

と、だけ。

院長室のドアが閉まって、独りになって、

腹もたちます。

逆に、ナサケナイ気持ちで逃げたい想いに、

恥ずかしさで叫びたい時も在り、

大いにプライドが傷つき、

煙草の箱を床に投げつけて、

ウ~ン!と、椅子に沈み混むことも。

で、

一時心を整えた振りをして、

院長室のドアを開けて、

何事もなかった様に、

スタッフと接しています。

治療で上手くいかない症例もあります。

それを患者さんの体質のためとは、言いたくありません。

私の見立て違いであったと、

私は患者さんに対して正直に現状をお伝えしています。

その様な局面に於いては、

医者のプライド等と云うものは塵でしかありません。

私の診療所は、

私が診療所の顔ですから、

決してドン・キホーテにならないようにと、

決してピエロにはならないようにと、

でも、

孤独感だけ判ってきたような気がします。

医師と歯科医との資格の違いから

医学部を卒業した医師は、

専門分野を自らの意志で決定できます。

内科系、外科系、眼科系、云々。

対して、

歯学部を卒業した歯科医師は、

歯科のみの専門家として社会へと旅立って行きます。

歯科を選択した若人は、

歯科の門を叩いた時点で、

他の科を選べませんから、

絶壁を背に、自分を追い込む定めを背負うのです。

大学の6年間も、歯科のみの教育を受けます。

そう言った意味に於いては、

歯科の方が、より専門的分野と言えるでしょう。

歯科は医学と工学の両方の分野に股がって成り立っています。

生き物と材料との共存を

常に念頭に入れておかねばならない【特殊な科学】です。

また審美的はセンスも必要ですし、

手先の器用さも大きな仕事の分かれ目となります。

私は歯科医に成りたくて成りたくて、

この道に入りました。

歯科と云う学問が今、大きな岐路にたっています。

インプラントが歯科の治療を大きく変えました。

そのインプラントは、無くてはならない治療のオプションである反面、

インプラントが様々な問題を提議するようにもなりました。

歯を再生する研究も進んでいます。

歯そのものを殺さないで活かす治療の研究も進んでいます。

また審美歯科から美容歯科への進化の様相も、

繊維芽細胞の取扱から見えて来ました。

古典的芸能であった歯科技工も、

テクノロジーの進歩によって、大きく様変わりしている最中です。

もしかしたら今、

医科よりも歯科の方が大きな変革を遂げているのかもと、

これからの歯科は決して暗くはありません。