日別アーカイブ: 2016年5月6日

善し悪しの判断

私の歯科医としてのスタートは、

【歯科保存学教室第2講座】からでした。

主任教授  勝山茂先生

指導教授  加藤嘉郎先生

助教授       山口隆二先生

講師           新海航一先生

以下、医局員多数

大学院生は医局に2名のみでした。

昔ですから、

医局のドアを開くと、

煙草の煙でもうもうと。

デスクに向き合ってひたすら原稿を書く先生も居れば、

大テーブルで将棋を差す先生、

現像暗室や研究室で何やら忙しそうな先生。

医局のドアは、診療室への出入りで、

常にバタンバタンと云う状況でした。

脇では、学生に説教だか指導している先生がいたり。

私は、その全ての【パシり】から始まりました。

全員の白衣のクリーニング出しや、

昼食の出前の品を、全員に聞いて回るのも

当然、新人の仕事です。

コピーも当たり前。

ホチキスで留める部分が適格でなければ、やり直し。

研究室の設備の掃除も、私の仕事。

実験材料のサンプル作りは当たり前。

雑な処があれば、当然、雷が落ちるのです。

診療においても、

何から何まで、

細かくチェックを受けました。

レポートを出せば、

床に叩きつけられること毎日。

診療時刻が終わると、

基礎実験の手伝いです。

試験管やビーカーの洗浄も、

染み1つ残らないまで指導されました。

複数の実験が同時に動いていますので、

結果を集計するのも新人。

統計処理するのも新人の仕事。

少なくても教授が帰宅するまでは、

誰ひとりとして帰れません。

当然、私は最後になる訳です。

言葉使いも、徹底的に上下を指導されました。

教授の講義には、皆が教授の後ろに続きます。

そんな時代でした。

学生は学生で、私ら臨床系講座の人間は、

恐かったと思います。

私らの姿に、廊下を開けて頭を垂れて、

過ぎるのを待ってましたから。

私は、こういう世界に18歳の年で入り、

歯科医師免許を取得し、

歯学博士号を頂くまでの10年を過ごしました。

青年期から大人の入り口までを、

この環境で過ごしました。

今、私はこの環境で歯学を学べた事を感謝しています。

が、

今の若い人はどう感じるでしょう?

否、

学生の親御さんが、どう感じるのでしょうか?

私らの仕事は、メスを持つ仕事です。

人の身体を与る仕事です。

現代感覚の善し悪しを云う資格は、

私にはありません。

が、

50をとっくに過ぎた私は、

厳しい気持ちで、

常に器具を手にして過ごしています。

時代

今しがたHP上でアップした【水のように】と題したブログに

多くのお便りを頂きました。

今日は、患者さんが多いので未だ全部に目を通していません。

新患の患者さんは、1日にお一人までと決めています。

連日、新患の患者さんの予約を頂き、

本当に【歯科は不況産業】で、

何処の歯科医院も【患者減で困っている】と、

頻繁に耳にしますが。

最近の患者さんの傾向として顕著であること。

其れは、

技術的稚拙さが目立ちます。

最新機器だか何か判りませんが、

もっと基本的な問題から生じたトラブルである事は明らかです。

大工さんが、便利な機械が出来たお陰で、

逆に技術が落ちてきているのと同じ現象でしょう。

人の身体は、最後は機械仕掛けで治す訳にはいきません。

そんな人の【驕り】と【怠慢】と【自信の無さ】の結果が、

新たな患者さんを造っている気がします。

で、

先のブログでのご質問の中で一番に多かったのが、

先生は腹が立たない性格ですか?

と、

先生は、ストレスをどうやって解消してるのですか?

ですって!

笑っちゃいますよね!

私は短気!短気!

腹の虫が【でんぐり返し】起こす位に、怒こります。

何年間に一度の割合で、

大人気ありませんが、患者さんに怒こる事もあります。

其れは、余程の事ですが。

でも、

患者さんの自己診断には、腹はたちません。

相手は素人ですから。

インターネットバイキングって言うンですってね?

インターネットで観て、次から次へとお医者さんを

自己都合で変える方を。

そういう方は、

別名デンタルジプシーとも云うんだそうです。

結果、私は治療しないので、

直ぐに忘れます。

記憶に遺しません。

私のエネルギーの全ては、

私の患者さんのために消費しませんと。

この辺りは、私はドライな程に割りきっています。

私は患者さんのために在るのだと。

仕事上のストレスですか?

コレは真面目に何かに取り組んで居られる方なら、

どんな仕事に就いた方でも同じだと思います。

ゴルフなどのスポーツに汗を流してストレス発散。

盛り場でおネェチャンのお尻を追いかけてストレス発散。

趣味に没頭してストレス発散。

人それぞれでしょう。

私は無趣味です。

と云うよりも、

今までに随分と、他人の10生分くらいの悪さも、遊びも経験済みです。

【歯】程に興味深かい対象はありません。

それでもストレスは溜まります。

昔みたいに、

またおネェチャンと遊びましょうか?

が、

哀しいかな。

気持ちも、老体も就いては行かぬようです。

水のように

ある女医である患者さんから、

「先生ん処は、ある意味【心療歯科】ですね」

と、言われた機会がありました。

そうかもしれません。

田舎街の高松市で、こういうスタイルで開業したものですから。

当時はキチガイ扱いされたモノです。

いずれアソコは潰れるぞ!

とまで、言われていたのを、

私は、グッと我慢で、今日に至りました。

開業当初は、患者さんなぞ来る筈はありません。

予約の電話が入った時に取り損じがあってはならない!

と、電話の子機を手にして、

用をたしていた当時を思い出します。

私は、【理想の歯科医院】を創ろうと決めていました。

【確り】と【安定感】のある【歯科の王道】を行く歯科医院です。

インターネットでの【にわか知識】で見つけた治療のみ望む患者さん。

歯医者なんぞ、

何処でも一緒と、インターネットで何となく決めて来られる患者さん。

その様な方も、チラホラ見掛けるようになりました。

逆に、

探して、探して、

紹介者にお願いしてと。

どうか何とか助けて下さい!と、

そんな患者さんも大勢、お越しになられます。

前者のかたに対しては、

丁寧に丁寧に、治療方法の選択の難しさを説明します。

長時間かかって壊れた口の中です。

【簡単、迅速に治す治療方法】の落とし穴に

気づいて頂かねばなりませんから。

短気な私ですが、

歯科に於いては相当に【粘い】性格だと思います。

それでも、一向にご自身の希望を変えない方も

中には居られます。

その様な時には、私はお役にはたてません。

その患者さんのリクエストに応じる歯科医は大勢に居られますので。

一生懸命に応対しても通じない相手が居るという事実は

長い人生の中で経験してきました。

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残念な気持ちにはなりますが、その様な患者さんに関しては、

数年の後に、

申し訳なさそうに戻って来られる事も、

経験上、判っています。

決して流されてはならないのが【治療方法の決定】だと思っています。

で、

頼って、頼ってお越しになられる患者さんは、

全般、歯科治療の【難症例】に加えて、

【歯科医師の不信感の塊】とまでに拗れた方ばかり。

【歯科医師不信】なのに、

何故【私の処に?】と、

思わない訳ではありません。

ただ私は確かに【歯科医師】ですが、【歯医者】だと、

そう違いを認識しながら診察に従事して過ごしてきました。

【歯医者】とは【患者さんと共に生きる者】と。

前者、後者、共に、

患者さん其々に【心】【気持ち】があります。

私は人を診ているのですから。

【歯】や【口の中】を診ると同時に、

私は患者さんの身体の中へと、

染み込み、入り込む【水】で在らねばと、考えています。

【歯】を通じて、

患者さんに【幸せ】になって欲しいと願っているからです。

 

文明開化

何十年も昔、全米でベストセラーとなった日本人女性の認めた本を

二月ほど前に見つけて、

時をみては頁を捲っています。

時は明治から大正の頃の本で、

【A daughter of SAMURAI】です。

スペルミスがあれば、スミマセン。

院長室のソファで眠ってしまったようです。

朝の決まった時刻に

マリリンに顔を舐められて目を覚ました処です。

昨日買ったコンビニのコーヒーの残りを飲みながらの、

今日の一発目のブログを認めている処です。

まだ目が覚めてません。

当時、まだ極めて珍しかった国際結婚でアメリカへと嫁いだ日本人女性が、

日本の女性を認知して貰うために認めた本でした。

アメリカでベストセラーになったのも、

よく判ります。

当の私も、仰け反るように驚きましたもの。

本の中の日本人女性は今、

日本には居ません。

其れほどに、この国が変わったのだと思います。

私が読書する際は、

一気呵成に読み終えるのですが、

この本は、其れが出来ません。

自分の置かれた環境なり、

周囲を観るほどに、

心が重くなるのです。

文明開化は、

文化を壊してしまったようです。

50を過ぎても尚、徹夜

医科の領域の最先端の文献において、

【幹細胞】や【繊維芽細胞】と言う語句を頻繁に目にします。

コレら細胞は、歯科の領域に於いては

さほど珍しい語句ではありません。

【幹細胞】は歯の内部の【歯髄】が、その宝庫ですし、

【繊維芽細胞】は、古くから私らは、

この細胞と上手く付き合うことが、

治療成功の鍵で在ったからです。

コレを聞くと多くの患者さんは、

へぇ!と、

驚くかもしれません。

人の身体は機械仕掛けではないのです。

テクノロジーの進歩は人類に多くの恩恵をもたらせています。

しかしながら、

未だ科学では解明仕切れない未開の分野の方が多いのが現実です。

私の専門分野である【歯科保存学】は、

この未知分野への入り口の最前線と言って良いでしょう。

開業医が患者さんの臨床だけ行うようになれば、

私は終わりだと思っています。

学会参加も、

半分は気晴らし、観光がてらという事実も、

この業界に入って判りました。

学会は、発表の場であると私は思っています。

私の年齢は、

歯科という仕事の最後の仕上げに入っています。

時計を観ると、

6日の午前1時を少し回った処です。

院長室の机の上の、

読まねばならぬ文献の山は一向に減りません。

ドアの脇で、

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マリリンは既に眠気に負けた様子。

患者さんの診察の際、手術の最中、

私の神経は極度に高ぶっています。

無論、患者さんが、其れに気づくことはありません。

それがベテランの仕事だと思っています。

治療を行うに際しては、

【原理、原則】があります。

その吸収に怠ってはプロの謗りを受けねばなりません。

また、私のように大学に籍を置く人間は、

教育と研究にも業績を求められます。

ホンに、キツい仕事です。

このプレッシャーとの戦いは、

独りで。

以前、家人から罵倒された記憶が頭を過りました。

【誰それから、よくあんな窮屈な人間と過ごせるわねと私はよく言われるのよ】

私は、歯と一体となるを決意しています。

凡人の感性、価値観は判りません。

が、

仕事に真摯に向き合うならば、

ある種、窮屈な人間へと変化する事実を、

私は身をもって経験しました。

時間がきたから仕事場へ。

で、

時間がきたから帰宅する。

帰って観るテレビは、

バラエティーとクイズのみ。

興味の大半が、

フェイスブックとインスタの【いいね】の数値の上げ下げのみ。

コレが普遍的な日本人であるならば、

私は日本人を辞めようと思います。

息子の学費さへ確保したら、

マリリンと共に受け入れてくれる国を探して、

歯科で困って居られる方々へ、

この余生を役にたてたいと、

秘かに探しています。

この国は、違う方向へと道を逸れて、

もう軌道修正できない程に、

昔とは変わってしまった気がします。