月別アーカイブ: 2014年4月

私の患者さんとのかかわり方 その4.

もう50もスッカリ過ぎてしまった私ですから、仕事で云うとベテランの歯科医とでも云える歳なのでしょう。

しかしながら、この年になっても手術の前となると、それが手術としては小さな単純なものであっても
私は緊張を覚えます。

今までに少なくとも何千と云う手術を執刀してきました。

手術の日取りが決まってからは、患者さんのレントゲン写真を常に傍らに置いて、
所見を繰り返し繰り返し眺めて、次に行う手術のイメージを頭の中で描いておさらいするのが習慣となりました。

その様な生活を何十年と過ごしてきた私ですが、メスは万能では無いと云う確信は自分の戒めとして心に焼き付けています。

私は人の身体の神秘に、身体を畏れます。そして、身体を尊敬します。

その身体にメスを入れる前に緊張するのは自然な行いだと恥じ入る事はありません。

メスを持つ私が緊張するのですから、患者さんが緊張するのは当たり前な自然の行為です。

但し、私は患者さんの信頼に足りる技量と考えてを持つために、日々を過しています。

インプラント治療を受けるにあたって その14.

【ブリッジにしようか?インプラントにしようか?】
と云う相談を頻繁に受けます。

此の相談を持ちかける患者さんは全て、他の歯科医院でインプラント治療を勧められた方ばかりです。

インプラントは骨を傷つける事で、ブリッジは歯を傷つける事で達成される治療です。

その患者さん其々の状態が、どちらを傷つけた方がメリットがあるのかを適切に判断しなければならないのです。

単にブリッジの欠点をあげ連ね、インプラントの利点ばかりを熱心に説明を受けた患者さんが多いことに、残念な歯科の現状を憂います。

治療方法にはメリット、デメリット双方の性質を併せて持ちます。

その患者さんにとって、絶えずベストな助言が出来ない専門職は科学を語る資格はありません。

インプラント治療を受けるにあたって その13

大掛かりなインプラント治療が必要な患者さんから、決まって聞かれる話題があります。

あるメーカーから販売されている治療方法で、インプラントを入れたその日のうちに歯をいれて
即日に噛める様にすると云うものです。

しかも此の治療方法は、入れるインプラントの本数も少なくて済み経済的にも安くあがり、
もっと凄い処は粘膜を切開しなくても良い!と云う、患者さんの側から観たら夢の治療方法と言えるものです。

この凄い?治療方法についての私の返答は、極めてシンプルです。

この治療方法の開発者自身の、この治療方法の成績が公開されている論文を患者さんにお見せしています。
加えて、スウェーデンのカロリンスカ研究所、この研究所は世界で最も権威ある研究機関ですが、
このカロリンスカ研究所のこの治療方法に対するコメントも併せて患者さんにお見せします。

カロリンスカ研究所は、まさに適切にこの方法について結論づけています。

ー ファンタスティックな治療方法ではあるが、いまだ一般使用するべきではない。 ー

10年くらい前に、ブローネマルク.ノバムと云う治療方法が販売されました。
この治療方法は、ブローネマルク.インプラントの生みの親であるブローネマルク博士が開発されたものでした。

非常に良くできたインプラント治療でしたが、なんせ難しい手順が必要でした。
私も何症例か執刀させて頂きましたが、とにかく難しい!

数年で販売されなくなりました。

理論的に正しくても、扱える歯科医師の数が圧倒的に少なすぎて、販売ベースに乗らなかったのだと思います。

このブローネマルク.ノバム.システムでも、粘膜を大きく切開しています。

私は耳障りの心地よい言葉と云うものには御用心!御用心!と思っています。

入れ歯について その4.

私の診療所へとお越しになられます患者さんは、入れ歯をお持ちの際には、今までお造りになられた入れ歯を全て持って来られます。

あまりの数の多さ故に、驚いて、つい患者さんのお顔を見上げて見つめてしまうのも恒例行事となりました。

一応、全ての入れ歯を手にして拝見させて頂いている側から、どんなにか入れ歯で苦労をしたのか!を矢継ぎ早に私に語りかけるのも、
これではダメだと決意して訪れた歯科医院に於いて入れ歯の話し等はろくろく聞かずにインプラントを勧められた!と不満げに語るも
これまた恒例行事となりました。

巷の歯科医院で入れ歯の欠点を聞かされて私の診療所へお越しになられる患者さんへ、私がインプラントを勧めるなら
これ程楽な事はありません。

但し、総入れ歯に関しては、殆どがインプラント治療は必要なく、キチンとした入れ歯をお造りさせて頂ければ
患者さんも、新に快適な生活が送れるだろうと思われる症例ばかりです。

私は生涯、現役の歯医者で在りたいと願っています。

ただ、私が老人となった時に今のような細かな作業は到底出来ないでしょう。

ですから、今のうちから私は、総入れ歯の治療はより丁寧にするように心がけています。
今から何十年も先になって、私の指先に総入れ歯の勘所が確かに刻まれているための準備期間だと思っています。

入れ歯について その3.

歯を失った患者さんに対して、ほとんどの場合に私はインプラント治療を行っていますが、
血液検査にてインプラント治療の成績が思わしくないと予想できる患者さんに対しては
そのむねを患者さんにお話しして入れ歯の治療を行います。

総入れ歯を永年お使いになられてはいらっしゃるのだけれども、痛い!はずれる!噛めない!と
お悩みの方も大勢お越しになられます。

その様な方は、はなから入れ歯等は信用していないと云う風で、兎も角インプラントを!と望んで来られます。

何れにしても合わない入れ歯には、合わない理由があります。
その様な入れ歯は、駄目な原因が多く、当然噛み合わせもその内のひとつです。

歯が無い処にインプラントを入れるには、歯が無いのだから何の制限も無くインプラントを入れる事は出来ますが、
それでは後から歯の位置とインプラントの位置との不一致が起こり、力学的、審美的、発音の関係から上手くはいきません。

噛み合わせをキチンと治してからでないと良質の治療とは言えません。

ですから、患者さんの側がインプラントを希望していても、キチンとした噛み合わせを創るために、
先ずは仮の入れ歯を造って、正しい顎の位置を探していきます。

この時に前歯の位置や形を、唇や顔つきから決定したり、奥歯は呂律の回り具合や舌の動き等から決めていきます。

様々な手順を経て、仮の入れ歯が完成して、いよいよ患者さんに手渡す訳ですが、
興味深いのは、私の患者さんの殆どがこの翌回にお越しになられた時に

ー 先生、総入れ歯でもぜんぜん噛めます!痛くないし、外れないし!インプラントは辞めます。
  これは仮の入れ歯ですよね!本入れ歯はもっと良いですか? ー

皆さんが同じことをおっしゃられるので、仮の入れ歯を造る際の患者さんが不満そうに私の顔を見つめる気配を
察していますが、気にしておりません。

ー 本ちゃんの入れ歯が出来たら、もっと綺麗なお顔つきになられますよ! ー

無論、私の造った入れ歯は補修、修理が可能です。
皆さん、相等長い期間を同じ入れ歯をお使いになられています。

顎の骨が痩せて、入れ歯が合わなくなると云う事はありません。

入れ歯にまつわる嘘、良い入れ歯を造れない言い訳のひとつが
入れ歯をいれても骨が痩せて合わなくから不経済!
だからインプラントはいかがですか?

何時から歯医者が入れ歯の悪口を言うようになったのか!

珠を慈しむ様に、ガラスを労る様に、口を触ると云う事はこういうものです。

私は入れ歯治療は、立派な治療行為であると断言します。

定期検査で

朝の一番の患者さんは60代なかばの女性でした。

もう20年近くになる私の患者さんです。
今日は定期検査でお越しになられていました。

私は患者さんを診察する前に、必ず雑談する事にしています。
患者さんの近況や生活環境を知ることはとても大切なことです。

雑談の中から偶然、互いが気付いていなかった疾患が見付かる場合もあります。

また、呂律の回り具合や噛み合わせの高さ、あるいは唾の量などについても
然り気無くチェックしています。

今日の話題は、小保方女史について患者さんからふられました。

ー 先生、この間の記者会見、どう思われました? ー

ー 可哀想じゃない!私なら、あんな大勢の前での釈明なんか恐いですよ!よく頑張ったと思いますよ! ー

ひと通りの検査が終わって、私が診療室を後にすると後ろから患者さんが歯科衛生士の宮田君に話し掛ける声が聴こえてきました。

ー 男の人はみんな、若い女の人が涙を流したら、ああ言うのね! ー

吹き出しながら、階段を降りた私です。

インプラント治療を受けるにあたって その12.

インプラントを埋め込んだその日のうちに噛める様にする治療を【即日加重インプラント治療】と言います。

基本的に私は、この方法に否定的な立場を採っています。

骨結合インプラントの産みの親であるブローネマルク博士とアレブレクソン博士の基礎的な研究は半世紀以上前のものですが、
未だに博士らの研究結果である上顎で半年間、下顎では3ヶ月の安静期間が必要であるという報告が、現在でもゴールデン.スタンダードと
なっています。

確かに症例を選べば、下顎の前方部分は骨が硬いために、この部分4ないし5本のインプラントを埋め込んで
その日に加重を加える事が可能な場合もあります。

しかしながらインプラント治療と云うのは、単に手術だけの治療ではありません。

噛み合わせ、すなわち下顎が正しい位置で治療が行われているのかが、とても重要になります。

最近話題の顎関節症の原因の多くが噛み合わせにある事は広く知られているとおりです。

治療行為には様々な誤差が生じます。

長時間の施術で口を開けた状態が長く続き、しかも麻酔で粘膜、周囲組織も腫れた患者さんは
日常の正常な噛み合わせは出来ません。

その様な状態にある患者さんに対して、噛み合わせ治療を行う事は私にはできません。

最新の治療のトピックスとしての目新しい治療方法の紹介としては、即日加重インプラントは興味深いものです。

しかしながら、毎日インプラント治療を行っている生活を長年過ごしてきた私としては、
私の診療所にお越しになられます患者さんに対して、確実に成功しなければなりませんから、
日にちはかかっても確実な手法を選択します。

治療において最も大切な事は、確実性だと私は思っています。

インプラント治療を受けるにあたって その11.

私のインプラント治療歴は今年で26年になります。

全ての症例が100%成功した訳ではありません。

インプラントと骨は確りとくっついているのだけれども、人工歯とインプラントを接合するネジが破損する機会も少しですが経験しました。

随分と時間が経過すると、患者さんの側でも、あれほどまでに頑張って治療したインプラントだから定期的な検査を受けとかなければ!と云う意識も薄まったり、
インプラントをした事さえも忘れてしまう機会もありました。

その様な患者さんにおいては、なにか普段と違う感覚を覚えてから、つまり異変を感じてから、やっと私の診療所へとお越しになられます。

だいたいが先程お話しさせて頂いた部品のネジの緩みなのですが、これはもう一度ネジを締め直して終りで、大事にはなりません。
但し、ネジが緩んだ原因を見つけなければなりませんが、これは殆どの場合にはインプラント治療をした部位の反対側の噛み合わせが原因である事が多い様です。

例えばインプラント治療をした部位の反対側の歯に、以前には無かったグラツキが出てきた等と言った処です。

話を元に戻しますが、長い期間に渡って噛む仕事を負担してきたインプラントの各部品が定期的な検査なくして、全くノートラブルであると信じている
歯科医は先ずは居られんでしょうが、仮に居られたとしたら、その方は自動車を購入してから生涯、同じ車を、同じタイヤを履いて、エンジンオイルも交換しないで
乗っておられる稀少な方だと思います。

私はこの10年前まで位はブローネマルク.システム.インプラントを中心に使っていました。
良くできたインプラントでしたが、部品の緩みが起こる事が、このシステムの利点であり欠点でもありました。

今、私の臨床の中心になっているアストラテック.インプラントではネジが緩む機会は稀ですが、これもこのシステムの利点であり欠点でもあります。

ブローネマルクのインプラントの部品で既に市場に出回っていないものも沢山あります。
その様な部品を交換しなければならなくなった時に、残念ながらメーカーでは対応出来ない経験もありました。

この様な場合は、ブローネマルクだけでなく、アストラでも将来は起こり得る事だと思います。

ですから、世界三大メーカーの商品だから大丈夫!と云うのは、少し愚かな考えと言えるでしょう。

では、部品が無くなった将来はどうするんだ?の問いには私は抵抗なくお答え致します。

自家製で製作すれば良いでしょう!

そもそも歯科医とは、造り出す仕事です。

私がある時からアストラテック.インプラントにスイッチしたのは至極簡単な理由です。

権威ある学会誌に掲載されている権威ある研究機関の臨床で、アストラのデーターが占めてきたからです。

一言にインプラントと言っても、システムが変われば結果は異なります。

私が自身の診療所で使う製品は、そのデーターの結果とデーターの出所が関心の中心です。

基本的にメーカーの出すデーターを私は信用しておりません。

その様な訳で、海外の文献でアストラテック.インプラントのものが圧倒的に多いのが
私がアストラを使う理由です。

但し、アストラと言えども神様の創ったものではないので、完璧とは思っておりませんから、
余計に慎重に考えて治療しなければならないのです。

私がインプラント材料に望む要点は、純チタン製品である事。機械加工精度が極めて高いこと。製品の表面の洗浄程度が高く、滅菌レベルの高いことです。
確かにその様な製品は高級ブランドの造り出すものですが、メーカーは営利を追求するものと認識して、常に製品のレベルのチェックを怠らない様に、
馬鹿げたブランド信仰を棄てるべきが専門職たる医師の採るべき姿勢だと思います。

生体に優しい治療 その2.

インプラント治療の普及に伴って、様々な骨移植材料が市場に出回るようになりました。

加えて、歯科治療も審美的な傾向が強く求められる様になり、私見ですが、行き過ぎの傾向も認められます。

プラセンタ注射やプラセンタ薬の服用などは、その典型と言えましょう。

プラセンタ等は、わざわざ歯科で取り扱う必要など無いというのが私の意見です。

日本赤十字が、プラセンタ注射の経験のある方の献血を拒否している事実からしても、
私はプラセンタを自身の治療で使う必要性を感じません。

歯の治療を行うにあたり、確かに便利な材料は沢山ありすが、私は使用する材料が全身に与える影響を先ずは第1に考えたいと思っています。

インプラント治療を受けるにあたって その10.

お電話にてのインプラント治療に関するお問い合わせも多いのですが、
これは私見ですが、インプラント治療と云うのは一種の移植治療ですから、出来ればもう少し真摯にお考えになられた方が良いと
思われる機会が増えました。

歯を何故抜く事になったのか?
歯をいつ頃抜いたのか?
抜いた歯の周囲の状態はどうなっているのか?

お問い合わせのお話しを伺いながら私は、そっちに関心がいってしまいます。

加えて、私の診療所では患者さんに血液検査を受けて頂きますが、その項目も25年の間に随分と変わりました。
患者さんによっては、最近検診で採決したからと、わざわざそのデーターを見せてくれる事もありますが、
残念ながら、私の知りたい項目が無い場合が多いのが現状です。

患者さんの関心は費用と期間である事が多いのですが、これも残念ながら全てのデーターが出揃わないと
なんとも言いようがありません。

私の診療所は【本当に困った時に思い出して行く歯科医院】とお考えください。

少しキザな言い方で申し訳ありませんが、10年位の少しの経験で云々のインプラント治療はしていません。

なん10年経って、良かった!と言って頂けるインプラント治療を私は第1と考えています。

御自身の身体の中に入るインプラントです。
どうぞ慎重に考えて下さい!