もう50もスッカリ過ぎてしまった私ですから、仕事で云うとベテランの歯科医とでも云える歳なのでしょう。
しかしながら、この年になっても手術の前となると、それが手術としては小さな単純なものであっても
私は緊張を覚えます。
今までに少なくとも何千と云う手術を執刀してきました。
手術の日取りが決まってからは、患者さんのレントゲン写真を常に傍らに置いて、
所見を繰り返し繰り返し眺めて、次に行う手術のイメージを頭の中で描いておさらいするのが習慣となりました。
その様な生活を何十年と過ごしてきた私ですが、メスは万能では無いと云う確信は自分の戒めとして心に焼き付けています。
私は人の身体の神秘に、身体を畏れます。そして、身体を尊敬します。
その身体にメスを入れる前に緊張するのは自然な行いだと恥じ入る事はありません。
メスを持つ私が緊張するのですから、患者さんが緊張するのは当たり前な自然の行為です。
但し、私は患者さんの信頼に足りる技量と考えてを持つために、日々を過しています。