私は縁が在って、歯科医になりました。
歯科医と云う仕事が自分に向いているのか、いないのか等は考えたことはありません。
凡そ自分には特別な才能もなく、縁が在って就いた仕事ですから、大切に向かい合いたいとだけ考えてこれ迄過ごして来ました。
もともとが単純な性格で、自分を凡才と認識しているからかもしれません。
他に取り柄がないことを良く認識しているから、歯にしがみついたのかもしれません。
歯の世界にドップリと浸かってみて、これで良かったのかどうかも考えたことはありません。
反抗期の倅が、この夏に私を少数派と罵りました。
私はある時から自分が多数派でないことを自覚していました。
望んで多数派でなようにと意識したことはありません。
私が【良い歯医者】に成ろうと努めれば努めるほど、ふと後ろを振り向くと、
大勢とは違う境遇になっている自分に気がつきました。
結果、多くのものも失いました。
結果、人が診えるようになりました。
芸の道に妥協は禁物です。
自分を責めて、叩いて、はじめて身につくのが技術です。
今では社会人となった娘は金融機関へと就職しました。
あれほど迄に、クリエーティブな仕事に就きたいと欲していた娘ですが、
無難に食べていく道を選んだことに、何故だろう?と思ってしまいます。
これが普通?の親であれば喜ぶのでしょうが。
娘も倅も、歯の仕事は大変シンドイと感じている様です。
当の本人は、死んで生まれ変わってても再び、歯医者になりたいと思っているのに‥。
楽い仕事なんかある筈ないじゃないですか?
平坦な人生なんかワクワクしないじゃないですか?
この仕事に就いたら、将来は大丈夫!ってオモシロクないじゃないですか?
何でみんな、安心、安全な人生をなんて虫の良い考えするんでしょう?
治療に於いてもそうですよ!
患者さんへは絶対に安全で安心な治療を施さなければなりません。
そのためには、医者はリスクを背負ってメスを持ち、自分の身体を削って勉強や訓練に励むんです。
誰かを楽にさせるには、誰かがシンドイ目をみないとが判らないんでしょうか?
何でこんな簡単なことが判らないんでしょうか?