日別アーカイブ: 2017年4月14日

私の師

なかなか大人に成れキレません。

困った時、

悩んだ時、

怒りに震えた時、

つい、

師匠である内藤政裕先生の診療所へと

電話をかけてしまうのです。

ドチラかと言えば、

先生も激情型のお人柄です。

情熱の人です。

しかし、

感情を勝る紳士の嗜みをお持ちの人です。

先走ってはならないので、

私は先生に先ずは相談してしまうのです。

先生には絶対に長生きして頂かないと、

本当に私は困ります。

歯科全般、人生全般、

先生の灯火の後を付いて行っていますので。

迷いは恵み

診断の際、

本当に、本当に悩みます。

【迷い】が在るからです。

もっと良い方法が在るのでは?

そんな考えが脳裏を過るからです。

私たちの一生も【迷い】の連続です。

ある方が、こう仰られて居られました。

迷うことができるのも、1つの恵みだと。

ナチスの収容所に送られた人々には、

迷うことは許されなかったと。

そりゃそうだ!

善い人の言葉に救われます。

少しでも良いから、

私も努力して、

善い人で居ようと。

善い人で居よう

患者さんでも、

無理難題を言う方が時として居られます。

ただ、

この無理難題の定義が

他の医師とは違うかもしれません。

治療への要求度が非常に高い患者さんに対しては

むしろ喜んで診察させて頂いています。

嫌な気持ちなど一切ありません。

面倒だとも一切思いません。

私自身の上達へのキッカケになりますし、

患者さんの歯科に対する関心が高いことを

喜ぶべきだと思っています。

複雑な症状を細かく訴えて下さる患者さんも、

私にとっては診断の参考になりますから大歓迎です。

私の言う無理難題とは、

不可能を求めてこられる方です。

組織が治癒するのを待たないで、

先に治療を進めと無理強いする方。

根管に病気が在るにも関わらず、

クラウンだけ入れて欲しいと強要する方。

この歯は長持ちしませんと、

懇切丁寧な説明を繰り返しても、

死ぬまで絶対に保証せよと望む方。

私も長持ちして欲しいと頑張って治療しています。

が、

絶対に死ぬまで保証と言われたら、

それ以前に、

いつ爆発するかもしれない歯であるのに。

そういう時は、

ご自身にて、

その様な名医をお探しになられて、

どうぞ、どうぞ、

他所で治療して下さいって言いたい気持ちになります。

実際、言いますけど。

診察時間を絶対に守ってくれない方ですか?

そういう方はほとんど居られません。

お時間のお約束をお守りになられない方は、

診療を進める気がない方だと、

私は判断しています。

治療のアポイントはコチラからはお採りさせて頂いていません。

患者さんのお人柄を尊重しつつ、

丁寧な仕事をと考えています。

でも、

私も相手も人間です。

気持ちの糸を切って下さる機会にも遭遇します。

その様な時には、

正直、ホッとしています。

私はもう若くはありません。

紳士として毅然と居たいと思います。

楽しめない歯科治療はしたくはありません。

人の暖かい心の判る人で居たいと思います。

心の暖かい人で居たいと思います。

難しい理屈は判りませんが、

私はそういう気持ちで診療に勤しんでいます。

 

 

 

 

宮田君へのアドバイス

余程の大切な用件がない限り、

私がスタッフルームへと足を踏み入れることはありませんでした。

嫁入り前のお嬢様方への配慮が紳士の嗜みであると云う

考えからです。

が、

宮田君も既に立派な主婦となり、

いや、

私の分類にて【おばさん】の範疇へと入られたことから、

親しみを覚へ、

時たまに、

スタッフルームにて宮田君と雑談するようになりました。

先生、主人への1ヶ月のお小遣いはいかほどに?

何だか他人事とも思えず、

ご亭主を哀れとも想い、

といって、

若い男に余計な金を持たせるとろくなことはないし、

コメントに戸惑うのです。

一月の食費ってどのくらいでしょう?

将来の教育費のためにどのくらい貯蓄しましょう?

仕事ぶりから宮田君の性格は良く判っています。

真面目な良妻賢母になるでしょう。

宮田君のご亭主はとても好人物です。

大変に好感が持てます。

が、

私は宮田君の父親気分。

娘を案じ、

娘に味方するのは自然の道理とも言えます。

エエか!宮田君。

ご亭主の悪口はどっちのご両親にも言ってはいけませんよ!

悪口言いたい時には私が聞きます。

それとな!

コソッと、いいか!コソッとと云うのが肝心なのじゃ!

コソッと時々に財布の中を視ておくのじゃ。

でな、

足らない時には多少の武士の情け程度の小遣いをな。

金入れられて文句言う奴は居るまいでな。

その次いでに、

そっと中身をチェックしておくんじゃ。

携帯電話?

それは私の口からは言えないわな。

まぁ、君のしたいようになっ。

ただし、バレないのが大切だな。

浮気の一度や二度なら堪えてあげなせぃ。

それはよ~く言っておきます。

君のご亭主は男前で仕事ができるからな。

それならモテるわな。

君もそれで選んだんじゃろ?

いつも綺麗にしておくんじゃな。

てな、

勝手気儘な私の言い放題を

どう聴いて居られるのやら。

 

医療のホスピタリティ

【面倒だ】と思った瞬間、

【だから、しない】のではなく、

【だから、する】と云う自分造りに

随分と苦労しました。

開業医を【真面目】に生業とすると、

キチガイじみた程に多忙です。

うっかりすると、

書類の山に埋もれてしまいます。

溜まった仕事を処理する苦しさより、

自分の生活を見直す方が楽だと、

気づいたことがキッカケです。

使った器具は直ぐに拭く。

後から消毒作業するスタッフが楽になりますから。

作業台の上も、作業のステップごとにサッと拭く。

そうする事で絶えず綺麗さを保つことが出来ます。

些細なことかもしれません。

でも、

【マメさ】がとっても大切であることが、

人間関係からも判るように、

そういう処に、

【コツ】が在るのかもしれません。

私の手術室です。

空気レベルは一般医科の手術室以上に、

浮遊飛沫や埃はありません。

それは、そういう設備を整えているからです。

でも、

それは患者さんには無関係なこと。

私の自己満足の問題ですから。

材料棚など設けてはいません。

背の高い棚の上の埃が嫌だからです。

材料は別室に整頓しています。

手術台を覆い被さるような大きな丸い無映灯は、

私の好みではありません。

いかにも手術と云う感じは恐いですよ。

それに埃が溜まった無映灯を、

多くの他所の手術室で観てきました。

私の無映灯は天井に埋め込んでいます。

フォーカスは手元のスイッチで調整出来ます。

これはオリジナルです。

こういう事も患者さんには言いません。

こういう処が紳士の嗜みだと思っています。

手術は綺麗な環境で行うモノです。

綺麗な環境とは、

モノを置かないことです。

で、

【こまめ】に掃除。

治療環境への配慮に欠ける医師に、

細かい配慮ができる筈はありません。

患者さんに対して、

ハウスメーカーの展示のように、

医院の設備を披露する行いも否定はしませんが、

本当に大切なモノは何ですか?

最近の医療機関のホームページを観て下さい。

どこもかしこも【患者さま】。

一昔前の医者のように、

ふんぞり返っているのは、

人格教育を受けない医者が多かったからです。

でも、

私らは商人ではありません。

患者さんの求めに反する言葉を

あえて言わなければならない局面も在ります。

それは患者さんに健康で居て欲しいからです。

私は患者さんとは対等な関係で居たいと思います。

ですから、

【患者さん】とあえて言わせて頂いています。

サービス業と医療は、

紙一重の差ですが、

多少、色合いが違うと思います。

【患者さんのために】

それが医療のホスピタリティだと思います。

 

 

気持ちの持ちよう1つで

好きな人の意見なら素直に聞くけれど、

嫌いな人の意見には耳を貸さない。

そんな時代が在りました。

そんな私に、

意見と云うものは相手を離れて、

客観的に受け止めるものだと

気づかせてくれたのが【歯科治療】でした。

【誰が言おうと、正しい意見には従うべきだ】

この言葉が正しいことは、

治療の結果から認めざるを得ない経験を重ねることで

否応なしに身にしみるものです。

【間違った意見に従う必要はない】

ただし、この言葉には大きな仕掛けが在ることも、

後に気づくことになりました。

相手の意見を検討するためには、

まずは自分が自分なりの意見、判断を持っていなければなりません。

さらに、

自分の考えのみが正しいとは限らないと云う【謙虚さ】と、

他人には他人の考えがある、

と云う相手の人格への尊敬も必要だからです。

いくら人の意見を聞いたとしても、最終的に決断を下すのは、

他ならぬ自分であり、

その決断の結果に対する責任は、

あくまでも自分に在ります。

慎重に慎重にとなればなるほどに、

自分が【聞きたくない意見】を言ってくれる人を

大切にしようと、

考え方が変化したように思います。

私は椅子が好きなんです。

診療所の至るところにチョッと座れるように、

椅子を置いています。

その椅子の直ぐ脇に、

これもチョッとしたアクセサリーを置いています。

椅子に腰かけて、

チョッと考え事をと云う瞬時を

大切にしています。

ミニチュアの歯科治療椅子は、

この診療所の新築祝いとして、

東大阪開業の本多正明先生から頂いた大切な品です。

素敵なモノに囲まれて、

心に余裕を持ちながら、

私は患者さんとの時間をご一緒しています。

 

 

禁を破る

私は泣いています。

医師には秘密保持と云う大原則が在ります。

ですから、

私がホームページなどで患者さんと並んでポーズなどと云う

ハシタナイ行いは軽蔑しています。

患者さんを営業活動に利用しているのが

アリアリと伝わるからです。

当の医師には、その意識はないのだと思います。

ハシタナさと、美しさの判断基準の差は育ちだからです。

しかし今日、

私は禁を破ります。

20代後半からの患者さんであった武田宏子先生がお亡くなりになりました。

初診から15年ほどは、

東京に本拠を構えられ、

名古屋市、大阪市、高松市のレッスン会場を

駆けまわる多忙な日々を送られていらっしゃいました。

原稿の執筆、

メーカーの方とのヤリトリ、

治療の合間の雑談から、

そのコツを随分と伝授して頂きました。

ある時、

東京の先生のオフィスに所用があり、

立ち寄った機会が在ります。

気儘な先生でしたから、

この私を2時間以上待たせたんですよ。

先生のご性格は当の承知の介でしたから、

壁越しに聴こえる先生の演奏に聴きいっていました。

浪曲、都々逸、三味線が贔屓の私ですから、

普段、ピアノの演奏などには縁がありません。

それはそれで新鮮な想いで聴いていました。

で、

ドアが開いて、

隙間から小さなお顔を出した先生は、

いかにも申し訳なさそうに、

ごめんなさいねと。

私の方は、

何か特別なことがあっての長時間の演奏でしたか?と。

この愚かなる私の問いに、

かの有名な武田宏子節の炸裂が始まったのです。

私らはプロなのよ!

1年のうちの何回かの舞台のために

毎日、毎日、鍵盤と格闘しているの!

ガツン!と効きました、この台詞は。

以降、

今では人から笑われても、

毎日、毎日、歯の彫刻を続けているのは

武田宏子先生に影響されての事です。

随分と可愛いがって頂きました。

私の新築した今の診療所を観て、

物凄く喜んで下さった顔が懐かしい。

で、

私はモーツァルトや他人の書いた曲ばかり弾いてきた。

よし!

やってみよう!

若い時分から観てきた先生だ。

新築祝いに曲を創るから。

で、

私が弾いて録音しよう!

数ヶ月の後に、

先生から、いついつ、何処其処のスタジオへお出でと。

私はスタジオなんて初めてですから雰囲気に圧倒されました。

色々な関係者が居られましたが、

先生は女殿様のような気品が在りましたね。

先生、普段は何回もリハーサルするのよ。

でも、

私は、ず~と先生を観てきたから、

先生の性格を考えて、

ぶっつけ本番!

驚きおののくスタッフたちを顎で指しづし、

ピアノ前に腰をおいた瞬間、

小さな小さな先生の身体は、

大きな大きな西洋の鳥のように

羽ばたいたのです。

音にも命が在ることを

この時に初めて知りました。

また、

時代を創ったカリスマのプロの仕事に、

知らず知らずのうちに、

頬に涙が流れていました。

私にプロフェッショナルの生きようを

ご自身の生き方にて指導して下さった先生であり、

患者さんでした。

今日、告別式。

脳裏に先生から頂いた曲の音が消えません。

私は歯科医師ですが、

職域こそ違え、

私も武田宏子の弟子の一人です。

武田イズムは確かに私の歯科医学のなかに

生きています。