日別アーカイブ: 2013年12月11日

段取り

 仕事が終わった後の
気晴らの一つとして
夕食を造る事が挙げられる。

 スーパーで買い物しながら
メニューを考えるのは
巷の主婦と同じである。

 娘たちは
各々が制服から着替えて
腹を空かせて
飯は未だかと
待ちかねながら
テレビの前で。

 小学校低学年と幼稚園児である娘の
就寝時刻を考えると
帰宅してから寝る迄の時間は
ごく僅かしかない。

 その間に入浴ともなると
言わずもがなである。

 私は自称、段取りの名人である。

 食材を切りながら
鍋を沸かし、
煮込み料理の間に
食卓の準備を整へ、
皆が席に着くや否や
ご飯を盛り汁をよそい
揚げ物なり焼き物を
次々と
熱いうちに
食卓へと運ぶ。

 皆が席を起ってから
私はゆっくりと
食事を採る。

 洗い物を片付けてから
娘たちの嫌がる襟を掴んで
一緒に入浴する。

 風呂のなかでも
三人娘の頭と身体を
流れ仕事で
洗って、
それでもって
また順番に
バスタオルで拭いていく。

 仕事場所が戦場である事は
間違いないが
私にとって
帰宅してからの時間との戦いも
これ又、戦争である。

 私の早寝早起きは
今では有名となったが、
単にこれは
くたびれても結果であり、
早起きも
そうでもしなければ
自分の時間を
確保出来ないからである。

 但し、
この段取りは
大いに仕事に役立つ様になった。

 私の贔屓の料理屋の厨房の中は
驚く程に
清潔で、かつ整然としている。

 何事にも
段取りの良さと云うものが
モノを云うのだと
私は確信して疑わない。

技術を育てる

 旨い鮨を戴いた。
この様な旨い鮨は
今では希少となった。

 先日テレビ番組で
最近の回転寿司事情なる特集をやっていた。

 あの様な紛い物が
如何に知恵を搾ろうとも
紛い物は紛い物である。

 鮨は術である。
回転寿司は単にお客が多く来店するに
一喜一憂する商人である。

 商人も立派な職業であるが
技術屋ではない。

 その辺りをはっきりと区別しなければ為らない。

 食するお客に
その辺りの分別が無いから
作り手が
右往左往し
最近話題の
偽造メニューなる
愚かな振る舞いが
日常茶飯事となるのであろう。

 但し、
作り手に
確かな術を
持ち得ない輩の
多いことも
露見したが。

 顧みれば
歯科も全く同じである。

 誰でも自称名医の様在り。
歯科医とは
医療人であり
職人である。

 本来であれば
寡黙なる自分仕事に
徹する類いの人種である。

 技術立国日本であったが、
この国から
もしかしたら
本当の技術が
消え去るかもしれぬを案じる。

 技術を育てるは
誰であろう
他ならぬ国民であるのだが。