腹の虫が治まらない時が
誰しも在るのではないだろうか。
その様な時には
若い時分には
ものにあたったものである。
壁や硝子が
凄まじく壊れ散った後、
後片づけの後味悪さが
一層、
怒りを増幅させていた。
何かと煩い昨今である。
この様な真似をする人に対して
事故制御能力の欠けた人と云う
評価になるのであろう。
私は若い男であるならば、
其れで良いと思っている。
若い男のエネルギーの爆発は
成功への必須条件である。
若い男であるならば、
時には、
自身を制御出来ない位の
エネルギーがあった方が良い。
大変、気の毒な世状である。
それ故に、
去勢されたの如し草食系と呼ばれる
骨の無い男が増えたのであろう。
私は既に初老である。
悲しいかな、
生物体の定めである。
昔、テレビのCMで
岡本太郎が
【芸術は爆発だ!】と、
叫んでいたが、
歯医者の仕事も
自己のなかに
創造性を封印し、
凝縮させて
指先から
エネルギーを
照射せねば
良い仕事は出来ない。
どの様な仕事も
命をかけて取り組むならば
皆同じような気構えで
自分のなかのエネルギーの
爆発方法を
模索し続けるのだろうが。
其れでも、
初老は初老である。
怒りを堪えなければ
みっともない事
この上なしである。
この様な時に私は
役所広司主演の
【連合艦隊司令長官 山本五十六】のDVDを
繰り返し、
観ることにしている。
あれ程の不条理のなかを、
自己制御しつつ
最後に散って行った
元帥を思うとき
抑えねばと
自分に言い聞かせて
煙草に火を点けている。