歯型彫刻


虫の知らせと云う言葉が・あります。

ふとした際に、

ハッと。

ハラリと、

落ち葉が枝から離れて、

地面へと舞う瞬間が

脳裏を過ぎる時、

事実は判りませんが、

祈りを捧げる。

そんな経験が誰しも・

在ろうかと思います。

出勤し、

何時ものように、

何時もの順序で、

診療の準備や診療所の掃除をしている

その最中に、

ふと、

手を留め、

立ち止まり、

祈りを捧げたのです。

人それぞれに・

いろいろな表情がありますように、

歯にも・

いろいろな表情が在ります。

仕事柄、

歯の些細な表情に、

手探りで、

その原因と状況の把握に

四苦八苦し、

日々を過ごしてきました。

石膏の塊を握りしめ、

彫刻刀を手に、

ひたすら歯の顔を造る作業が、

私なりの、

毎朝の仕事始めの準備体操となって、

15年近くになりました。

人の一生、

歯の一生、

歯科医師である私にすれば、

大きな荷物を背負った仕事に、

後悔する日を過ごす事・たびたびありました。

仕事との縁、

関わり過ぎた時間に、

にっちも・さっちも行かなくなった

直進するしかない戦艦の想いに

もがく日も・たびたびです。

しかし、

私は人が好きなのでしょう。

歯が好きなのでしょう。

今日、

また1本、

彫刻が終わりました。