日別アーカイブ: 2014年9月11日

座右の書

私の鞄は、随分と重いのだそうです。

大したものは入っていません。

小さな手帳に、中味の淋しい財布、歯ブラシセットにデンタルフロス、そして本くらいなものです。

本は三冊。

一冊は、現在読みかけのもの。

そして後の二冊は、保母須弥也先生の咬合学事典と、小倉久米雄著の日本料理の達人心得帳です。

故 保母須弥也先生の名を歯科医ならば知らぬ人は居ないでしょう。

私は先生の著作のこの事典を、徒然なるままに眼を通すのが好きです。

もはや古典かもしれません。

しかし、治療の根本は時代を経ても変えてはならないと私は思っています。

小倉久米雄氏は、赤坂の懐石 味楽の店主であり、調理師の社会的地位の向上に尽力され、現代の名工、黄綬褒章を授章された
日本料理界の第一人者です。

多く著作を遺されていらっしゃいますが、この本は私の魂を揺さぶり、離すことが出来なくなってしまった名著です。

いつに読んでも、どの頁を開いても、心打つ名著です。

どの道に於いても、心得は同じでありましょう。

プロと素人の間には、大きな壁が在ることを再認識され、プロフェッショナル故にますます精進せねばと思い起こさせてくれる一冊です。

この季節を迎えると

毎年恒例となった日本歯科大学の一年生への特別講義が近づく季節が来ると、
専門書以外の本を読み漁るのが、これもまた恒例行事となりました。

歯科以外の職業との共通点を探すためです。

如何なる職業であっても、その道に没頭する人には、ある種の共通の匂いがあります。

刀鍛冶であったり、料理人、大工、書道家等などです。

縁が在って、ある職業に就いて、仕事とのかかわり合いと云うのは結局の処、
その人の心がけひとつに在ると言えましょう。

18歳の青年たちが、歯科の門を叩いて今後の6年間で、歯科の初歩を学ぶに際し、
恐らくアッチへ行ったりコッチヘ行ったり、
迷いや、悩み、苦しみ、戸惑いに自分を決して見失うことのないようにと、
どの道に於いても、結局は覚悟一つなんだ!と感じて貰いたいと願って、
色々なジャンルの仕事人の話を織り混ぜて、私の講義は構成されています。

学生への講義なのですが、病院の若い先生方も混ざって聴きに来られて下さっているのは、
皆がそれぞれに迷って、道を求めているのでしょう。

若い母校の歯科医師たちのために、やせ我慢でも、凛とした私であり続けていくのが先人としての私の務めだと思っています。

私の選択

突然の激しい雨に、驚いて窓から天を仰ぎ観てしまいました。

しばらくすると、何事もなかったかの様な空模様。

一時のお天気でさえ、この通りなのですから
人が長い人生を送る間には様々な空模様が在るのは当たり前の事かもしれません。

目の前に二つの道が在ったときに私は、辛んどい道をある時から好んで選ぶ様になりました。

その道を選んだからと言って、良い結果が得られる保証は当然のことながらありません。

但し、経験的にと云うよりも、安易な道を選ぶ自分に後ろめたい気持ちを味わいたくないために、ただそれだけの理由です。

私の選択の正誤は、当の本人たる私には判りません。

道なきに近い道を、これからも私は歩いていくでしょう。