大人の男


ふとテレビで【鬼平犯科張】が眼に入り、

観いってしまいました。

もうなん十回も観たにも拘わらず。

【血頭の丹兵衞】の巻です。

この巻から【小房の粂八】が鬼平の密偵となると云う

名作でも在ります。

牢の中で鬼平が粂八と茶碗酒を酌み交わしつつ、

粂八の過去を問う場面がとても良い。

あっしは二親は居りやせん。

もの心ついた時から、

おっばあに手をひかれ、

まぁありは雪、雪、雪でさぁ。

凍えるほど冷たくて、

腹もすいて、

そのおんばぁも道端で亡くなっちまって、

其処からは、

御決まりの次第ってもんでさぁ。

鬼平は黙って聞きながら茶碗酒を呑みつつ、

俺にも親は居ねぇんだよ。

母親の顔も俺は知らねぇんんだ。

人は様々な過去を背負い、

想いを封じ込めて、

それでも生きているのです。

弱音ばかりはイケマセンなぁ。

もう流す涙は、

私には枯れてしまったようです。

大人の男って辛いものですね。