人間だもの


心底、歯で困って居られない方には

理解できないかもしれません。

が、

私の日常は、

本当に歯で困って居られる患者さんに、

支えられて、

過ごしてきました。

私が生きる意味を、

歯に見いだせたのも、

本当に歯で困って居られる患者さんが

居られるからです。

若い時分には、

功名心に流されることも、

正直に申し上げて在りました。

が、

その様な気持ちがすっ飛んでしまったと云うよりも、

そんな余裕が無くなったと云うのが、

本音だと思います。

本当に歯で困って居られる患者さんが、

次から次へと、

お越しになられるのに、

その苦しさを

少しでも解決する一助となろうと、

無我夢中であったと云うのが本音です。

患者さんとは、

苦しいモノですよ。

苦しい時は、

苦しいと言って良いのだと、

私は思います。

受けとめるのが、私の仕事。

光を見つけるのが、私の仕事。

そう素直に感じています。

其れは私も、

ひとかどの苦しさを味わった人間であるからです。

苦しい時は人間だもの。

歯科医師は、

単に歯の大工ではありません。

歯科医師は、

歯を通じて、

患者さんの健康を取り戻す手当てをする専門職だと、

私の今の歯科医師の定義を、

そう思っています。

旧帝国海軍最後の連合艦隊司令長官であった小沢治三郎大将は、

たしか、

泣きたい時もあるだろう、

苦しい時もあるだろう、

淋しい時もあるだろう、

其れを耐えるのが、

男の修行である、

と云うような言葉を残されていたと、

正確ではありませんが、

そう記憶しています。

男の修行は、それで良いのですが、

患者さんは、

医者に救いを求めて

何の不思議さも、

違和感もありません。

人間だもの。