ある時期に、私は歯科医向けの講演を控えるようになりました。
人様に教えられるほど、私は大した歯科医ではないと思ったからです。
加えて、
もっともっと逆に自分自身が勉強したいと渇望したからです。
それからの私は歯科医との関わりあいを絶ちました。
毎日の診療の質を更に濃く望み、
文献を漁り、
実験室での手探りの作業。
母校での関わり以外は、
正に自閉症のように歯とだけ向き合っていました。
が、
母校から巣だった若き歯科医が再訪して下さったり、
人と人との繋がりからでしょうか?
気がつけば多くの若き歯科医が集まって下さるようになりました。
私の歯科治療を一言で申し上げると、
【全人的歯科治療】であったと思っています。
インプラント、審美歯科、修復、歯周病治療、噛み合わせ治療。
様々な治療パートが在りますが、
それは単なる【戦術】でしかありません。
歯科治療とは【戦術】の組み合わせであり、
また、
歯科治療そのものは
人の身体のリズムと言いますか、
バランスの中に調和させませんと、
長く患者さんの健康維持のお役にはたてません。
私の独特の治療を若き歯科医たちが【三枝メソッド】と呼ぶ由縁が
此処にあるのでしょう。
私には息子が一人居ります。
息子も将来に必ず歯の仕事の苦しみを味わうでしょう。
私の若き時代に大勢の先人の胸を借りました。
現在でも、そうです。
今の私に出来ること。
お申し出のある処で、
私は自分の歯科治療を隠さずお見せしようと考えが変わりました。
講演会や講習会の予定が思わぬ処からも入って来ています。
この様な時に私は、線引きはしません。
スケジュールと体力と相談し、
選ばずお受けする積もりです。
想うに、
今の歯科治療は治療の体を成してはいません。
ただただ少ない患者さんを増やそうと、
躍起になり、
泥化した体を成しているように思います。
患者さんは賢明です。
本当に困った時には、
技術力と人間味ある医師を判別出来るのです。
治療のための治療ではなく、
患者さんの健康維持のための治療だと云うことを
私たちは肝に命じなければなりません。