神田界隈にある古書店へとフラリ立ち寄る機会は少なからず在りますが、
所謂、本のリサイクル.センターなる処へはついぞ縁のなかった私です。
到るところで大きな看板を見かける様になりましたが、
どうも敷居を跨ぐ気持ちにはなれませんでした。
つい最近、母校の大学付近の信濃川沿いにあるショッピングセンターに隣接した、その類いの店の中へ遂に入ったる私です。
もの珍し気に店内を徘徊し、想わずある処で足が止まりました。
何と申し上げて良いのか判りませんが、
この様な処に在る事に憤慨する気持ちにもなりましたが、
立ち止まった処にある、ある本を棚から引き出して私は立ち読みを始め、
遂には完読に到ったのです。
著者は、中原泉先生。
現在の日本歯科大学の理事長.学長を務められておられ、創立者である中原市五郎先生の直系でいらっしゃいます。
私小説でした。
日本歯科大学の二つ目の歯学部として新潟校が設立された当時の様子と、
先生の産まれたばかりのご子息が夭逝される時の状況を重ね合わせて時系列で描かれておりました。
登場する人物も実名で描かれておられ、私としても其の名に懐かしい気持ちや、父としての心情を想えば、
複雑な心持ちを覚えました。
カミソリの様な斬れる文章に、嗚呼、歯科氷河の時代にはかような人物が必要なんだなと、
それでも、中原先生が仮に歯科の源流の直系の生まれでなかったのならば、
おそらくは筆で身をたてられたに相違ないと想い、
人の定めの不可思議さを感じざるを得ないが、率直な感想です。
道徳教育を科目にとの報道に接し、当たり前のことを押しつけと受けとることに
やはり道徳教育の必要性を感じます。
個人の其々の想いも、大きな運命の流れの前では抗うことが無意味との想いを持つのです。