本音


何十年も日々を同じような仕事の繰り返しで過ごして、
モチベーションが下がることはないのですか?と問われる機会がしばしば在ります。

私は凡人ですから、当然のことながら気力が失せる時がありました。

歯科医に成りたくて此の仕事に就きました。
良い歯医者に成りたい、上手に成りたいと云う想いが、ズット心のど真ん中に在りますので
日常の全ての所作を歯の仕事に役立つようにとの無意識の意が、本能のように自分の中に根づいているのは実感しています。

それでも気力が失せる時も在ります。

長い間かけて、試行錯誤して、私の気力の補給方法を見つけ出しました。

波長の合った作家の著作に触れること、歴史の著作に触れること、佳い映画に触れること、
そして越後の風に身を曝すこと。

掃いて捨てる程の数の歯科医が居りますが、
私の手で織り成す仕事は、私だけのものです。

未完成の像を、コツコツ仕上げる作業は、その個人でしかやり遂げません。

想い直して、心のノミとカンナをもう一度取り、握り締め、
これは独りで遣らねば為らんことと、
その様な繰り返しが、本音の処です。

が、結局は歯が好きなんでしょう、私は。