この間、新潟へ行っていた際に、
何時もの様に
末の娘と
人情横町を歩いていたら、
石山魚店の親父さんから
声を掛けられた。
「先生、これ持って行きなせぃ!
お嬢ちゃんと一緒に食べなせぃ。」
店脇の軒に
吊り下げた
干し柿であった。
両手で受けとる娘の顔は
今すぐにとでもと
訴えていたが、
家まで持ち帰り
炬燵で倅と一緒に
食べればと
言い聞かせて
家路に就いた。
私は、この様な
些細な日常に
幸せを感じるのである。
飽食、ブランド品に
囲まれ様とは思わない。
良い仕事をして、
家族に笑いが絶えぬを
望む様になったのは
自分がもう若くはないのだと
感じる頃になってからである。
但し、
良い仕事をすると云うのは
本当は
戦いなのだ。
他人にもと云うより
自身に偽りない
良い仕事をするのは
決して平坦な
道ではない。