歯医者の食道楽 その1.


 他人からは派手に観られがちで
仕事が終わってから街へと繰り出して
外食三昧の美食家と思われている私ですが、
実際の処は、
外食は月に一度か二度の割合で
其れも他所へ出張に出掛けた時に位で
もっぱら、
夕食は自ら包丁を手にするのを
好んでいる私です。

 外食するにしても
懐石料理等は
他人から招かれた時位で
私が最も好むのは
鮨、天婦羅等の
一点ものです。

 私は所謂、美食家ではありません。

 が、私が歯の職人であるからでしょうか。

 私は食材への手間のかけかたに
大層、興味を覚えるのです。

 食べ物と云うのは
単に栄養の補給の為にあるのではありません。

 人が人である証しとしての
豊かな心持ちを形成するには
美味しいと云う感動は
無くては為らないものであると
信じています。

 調理の方法へのこだわりは
素人なりの笑止で陳腐なものかもしれません。

 但し、たまの外食での
失意の機会が多い
今日この頃の料理屋の技術の低下で
私の自炊の機会が益々
増える様になりました。

 例えば、トマト。
生活習慣病予防や老化抑制に
効果があると云われるリコピンが豊富に
含まれているのは
皆さん、既にご承知の通りです。

 このトマトは冷蔵庫の中で保存する際に
トマト同士を少し離して並べて
密封容器に入れておかねばなりません。

 熟したトマトは
劣化を速めるエチレンガスを発生します。
エチレンガスを含んだトマトは
幾ら無農薬、有機で栽培されている
今では高価な品を求めても
健康志向からは
大きくかけ離れてしまいます。

 私は食材については
ごく普通の物で良いと思っています。

 其れよりも
食材へと手のかけ方のほうが
ずっと大切であると考えています。

 序でに、このトマト。
生で食べるよりも
加熱調理したものの方が
身体によく吸収されます。