インプラント治療にしても、
総入れ歯にしても、
審美歯科治療にしても、
上手くいってない症例を拝見致しますと、
基準が狂っているのが一目瞭然です。
その基準とは、
人が長い進化の過程において身に付けた
頭蓋骨と歯列、
すなわち、
多くの歯が規則性を持って、
並んで生えている決まり事です。
ある患者さんの初診時の状態です。
上顎は全てインプラントにて修復されておられます。
下顎には、
片方の奥歯だけにインプラントが、
残りは入れ歯にて、
治療が施されておられました。
莫大な治療のための御費用を
この患者さんは歯科医師にお支払いになられていらっしゃいました。
が、
噛めないのです。
痛みに苦しまれておられました。
私の診療所には、
このような患者さんがお越しになられて
後を絶ちません。
その度に、
私は精神的に大きな負荷がかかるのです。
精一杯、
歯科医学を学ぶ者として、
全ての叡知を、
全ての技量を、
私の小柄な身体から、
大放出させねばなりませんので。
お判りになりますか?
上のインプラントは骨とは全く結合していませんでしたので、
全て撤去し、
先ずは仮の総入れ歯をお造りさせていただき、
それを参考に、
最終総入れ歯をお造りするために、
蝋の上に人工歯を並べて、
あれやこれやと思案しています。
下は前医の施したインプラント人工歯の上に樹脂を乗せて、
噛み合わせ平面を大幅に変えた、
つまり、
噛み合わせの高さを高くしつつ、
噛み合わせ平面の修正を図っている
工夫の最中です。
初診の際よりもズッと、
噛み合わせを高くしたと云うよりは、
低く過ぎ、
秩序の無い噛み合わせ平面を
元に、
若い時分に戻す。
今、
そのための治療に取り組んでいます。
元来、
この患者さんは美しい女性です。
元来、
なんでも美味しく召し上がれる歯を
お持ちでいらっしゃった筈です。
その時代を蘇らせる。
で、
心も身体も健康であって頂くためなら、
私はどのような手間も惜しみません。
写真は母校である日本歯科大学の学生さんの
歯科保存学実習の光景です。
私の担当日の写真です。
教える者と、
教えられる者と、
立場は変わりましたが、
私にも、
あの時代が在りましたし、
今も毎日を、
患者さんのお身体を通じて、
学んでいる学徒である事に変わりはありません。
で、
痛感しています。
基準こそが絶対に変えてはならない事だと。