人を育てると云うこと


朝刊にて春の叙勲名簿が公表されていたので、

ついつい。

柬理十三雄先生の名前を見つけたのです。

もう78歳になられたとのこと。

神奈川にお住まいであることも判りました。

日本歯科大学の名誉教授です。

御専門は歯科麻酔学。

新潟校の学部長である藤井一維教授の恩師にあたります。

私の専門は歯科保存学ですから、

大学病院時代には私は先生との関わりはありません。

歯科大生時代に先生から歯科麻酔学の講義を受けたと云うだけの

一教授と大勢の学生の中の一人と云う間柄でしかありません。

当時の先生は学内の教授陣の中でも

所謂【大物】であると云う認識を皆が一様に持っていました。

口腔外科学の加藤譲治教授と麻酔学の柬理教授のゴールデンペアの率いる

外科系が幅を利かせていると云う空気だったと思います。

病院内でも、

外科系の医員は濃いグリーンの手術着を纏い、

歯科系の医員とは一線を画していたと思います。

先生は大変温厚な人柄であったと記憶しています。

また仕事面においても、

大勢は部下に任せ育てると云うスタイルであったと、

それは私ら部外者にも伝わっていました。

それは現在、

弟子である藤井教授と佐野教授のお二人が、

新潟校の学部と短大の長を務めておられることからも

結果が物語っていると思います。

人を育てると云うものに掛かる時間が

これ程にまで必要であると云う証と共に、

育てる姿勢は必ず結果として顕れると、

現在の母校の様相を鑑み、そう思うのです。

今でも時々、

先生からの講義ノートを開きます。

頁を開いた際の紙から、

青春期の匂いが漂ってくる気がします。

基礎疾患を持つ患者さんの手術の前夜あたりに、

私は古いノートに眼が行き、

で、

藤井教授の携帯電話にダイヤルするのが常となりました。

私が学生であった頃の先生の年齢に自分もなりました。

拙い私ですが少なからず私にも弟子が居りますが、

私の育てる工夫が実を結ぶことを

不安を抱きながらと云う今朝の一時でした。