父娘


院長室のデスクの向かい側のサイドボードの上に

1枚の写真を入れた額縁を飾っています。

治療で疲れた眼を、

デスク上から放して休めると、

この写真が視界に入ります。

今は社会人となった娘が中学に上がる前の

春休みに二人してスウェーデンへと出かけた時の社会です。

この旅が父娘最後の旅となりました。

誇らしげに並ぶ娘の姿に、

私は心が熱くなります。

あれから随分と年月が経ちました。

この娘とは異なる母親との間にもうけた娘が、

この春、

中学へと上がります。

不思議なモノで、

この二人の娘は顔も好みも瓜二つなのです。

ですから彼女らの想いとは別に、

私の遺伝子を強く受け継いでいるのだと思います。

どちらの娘も、

幸せな一生を送って貰いたいと願うのは、

私も普通の父でしかない証だと思います。

娘の側は、

これからも私の1番の批判者になる事でしょう。

私は娘からの批判は好んで受ける積もりです。

男心が理解できるには、

相当な苦労と辛酸を味わなければなりませんから。

娘には、

そのような利発者にはなって欲しいとは思いません。

苦労して欲しくない。

それが娘に願う父の本音ですから。