矛盾


私の仕事の性格柄、常に【平常心】でいることが求められます。

反面、パッションも心の内に秘めておかねばなりません。

この様に矛盾した二つの性格を上手く両立させることに

長い間苦労して来ました。

特に【平常心】でいる自分です。

診療の最中は私は【無心】です。

澄んだ水面の心で、

手先をコントロールしています。

が、

一度、患者さんから離れると、

日常の様々な事象からくる煩わしさなどが頭を過り、

心に波風がと云う処が現実です。

そのために、

読書や犬と戯れて、

余計なことを考えないようにと

気を逸らす手当てをするのですが、

やはり私が無心になれるのは【診療】だけのようです。

ワーカホリックと言われることでしょう。

ただ私にとっての【歯の仕事】は、

そう言った意味合いの対象ではありません。

と言いながら、

【歯の仕事】は大きなエネルギーを消耗します。

若い時分には体力が在りました。

この力の根源が枯渇してゆく【老い】を

嫌でも自覚しています。

焦りもします。

で、

再び心が乱れるのです。

先人たちは、どのように対処されたのでしょう?と。

恐らく、平和で穏やかな家庭環境へ逃げ込む位にしか、

男は不器用ですから、

その程度の事しかなかったのかもしれませんね。

先日、何処かの歯科医のホームページの印刷物が

眼に入って来ました。

以前は其処で治療を受けていた、

今では私の処の患者さんが見せてくれたのです。

非常に気の強い、我の強い奥方なのでしょう。

大いに語ると言った処でしょうか。

苦笑いを通り越し、

私なら、

この様な方の待つ家には帰りません。

この奥方のことよりも、

私はこの歯科医の頭と心の内を

どうしても知りたいと、

それと同時に、

あぁ!辛んどいなぁと、

朝からため息ついて着替えの準備に入っています。