男たるもの


私は池波正太郎の世界を心から憧れています。

しかしながら、私の元来の性格は全く別のものです。

ですから一層憧れるのかもしれません。

無理して、池波正太郎の作中に登場する人間の様に自分を見せてきました。

男の痩せ我慢と云った処だと思います。

元来の私は、おっちょこちょいの癇癪もちで、短気も短気で気短い性格です。

今では他人に大声で怒鳴る真似も、怒る事も無くなりました。
心中では怒り狂っていても、顔では悠然との真似も出来るようになりました。

男ですから、女性好きであるのは当然だと思っています。
若い時分には、それこそ随分と遊んだくちだと認識しています。

今となっては、此れは私の良い処でもあり欠点でもありますが、
スゴくイイカッコウしぃなので、自分のスタイルを崩す事が出来ません。

ですから、盛り場などでも澄まし顔で座っていることしか出来ませんから、
まったくモテなくなりました。

ー 先生はまったくスキがないわ! ー

等とよく云われるので、内心では少し淋しい気持ちです。

鬼平犯科帳の鬼の平蔵みたいに、遊郭においても女郎に肩でも揉ませて悠然と帰ると云った処に
男の美学を感じますので、イヤハヤ人は変われば変わるものだと自分でも思います。

いやしくも患者さんの前、若い先生方や学生さんから、紳士で在ると思われたいと思っているので、
少々窮屈ではありますが、仕方のないことと諦めています。

但し、家に帰れば、やはり其は普通のオジサンにかわりありません。
私の家族は他所での私の顔など知る由もないでしょう。

其れで善いのだと思います。