インプラント治療を受けるにあたって その5.


随分と一般的になったインプラント治療です。

が、インプラント治療を患者さんに奨める歯科医側も、インプラント治療を望む患者さん側も
インプラント治療を受けた後の数十年後の姿をイメージ出来ているのでしょうか?

とうとう高齢化社会に突入した我が国です。
私の診療所の患者さんの平均年齢は68歳です。

長い間、インプラント治療に携わってきて、
20年前にインプラント治療をした患者さんの多くが介護の必要な状態になっています。

私は自身の患者さんに対しては訪問診療をしています。
が、全般、治療の必要な方は幸いな事に見あたらず、
どちらかと云えば、口腔ケアの必要な患者さんばかりです。

口腔内の磨き残しを綺麗にして清潔にする治療が中心です。

ここで注意しなければならないのがインプラント治療です。

脳疾患などにより咀嚼が出来なくなった方や、超高齢者ゆえの不随運動がおこって
いわゆる口のモグモグ状態になった方は、しっかりと噛みしめる行為が出来ません。

案外とインプラント治療はプラークには強いのですが、
噛む力が無くなって、インプラントに対して力が加わらなくなった時に無力である事を経験した歯科医は多くはないでしょう。

噛む力がインプラントを介して骨に伝わり、それではじめてインプラントは長期に渡って
骨との結合を保っています。

噛む力が加わらなくなったインプラントは、骨との結合が壊れます。

長い間、患者さんを拝見させて頂いての私の経験です。

ですから今ではインプラント治療を行うに際して、
どのような状態になってもインプラントに対して力が加わるような設計をしています。

また、不幸な事にインプラントに対して力が加わらない場合には
別の方法にてインプラントと骨との結合が維持できる対策を採っています。

経験から知恵をしぼるのが私達の仕事です。