昨日のお昼前にお越しになられていた患者さんは、既に20年越のお付き合いとなりました。
インプラント、ブリッジ共に長い間、十分に機能しているので安堵しています。
もう70半ばのこの患者さんは一昨年程前より、ご亭主の終末看病に追われて、
身体はモチロン、心まで疲れに疲れ、相当に参っている様がマザマザと伝わってきていました。
生憎、このご夫婦はお子さんには恵まれず、私の診療所へお越しになられた当初には、
50の半ばでお元気であったので、ご夫婦其々が趣味に興じておられる様に、羨ましいと感じたものです。
相談相手、愚痴を溢す相手がいない〇〇さんが、段々と鬱傾向が強まってくる様が伝わってきました。
お口の中のクリーニングにでも月に一度はお越しになっては?と理由をつけて、毎月〇〇さん、元気かな?と、
お顔を確認しては、心に溜まった汚泥を吐き出させては、じゃあ、来月まで頑張れ!頑張れ!での繰り返しでした。
半年前に、ご亭主を見送ったる〇〇さん、メッキリ駄目になっていくのが判ります。
ずーと、ご亭主が窮屈でウットオシイ!などと仰られておられましたが、居なくなるとポッカリと
心に大きな穴が空いたのでしょう。
私の患者さんにも、随分とご亭主に先立たれた方がいらっしゃいます。
が、皆さん半年ですね、淋しいと仰られていたのは。
そのあとは、鎖から解き放たれたるかの如く、旅行に趣味にと、
女と云う生き物は凄いな!と秘かに怖じ気づく理由のひとつにもなっておりましたのですが。
〇〇さんは意外にも意外!
多種類の安定剤、睡眠剤、それでも、ドンドン落ち込んでいく様に。
ー 犬でも飼ったらどうですか?暗い家に帰って独りで電気をつけて、独りでご飯を作って独りで食べて‥。気が狂いますよ!当たり前!
犬でもお飼いなさい! ー
年長者に対して失礼な言い方ですが、こうなると親類のオバチャンみたいなもんです。
ー 犬!!先生、私が先に死んだらどうしましょ? ー
ー 俺が貰ってやっから!安心しなせぃ!速く心を切り換えてよ!観てられねぇわね! ー
と、何故かここで新潟弁で応じた私です。
昼休みに、私の車の後部座席に〇〇さんが座ったのは当然の成り行きです。
小さな小さなトイプードルの女の子を膝に乗せたる〇〇さん。
ー 先生、名前をつけて下さいな。 ー
ー 馬鹿言っちゃあ駄目よ!最近ボケて物忘れがヒドイのに、俺がつけたら覚えられんよ! ー
と、平気で酷いことを言う私です。
で、結局落ち着いたのは、
先立ったご亭主のお名前がヒサなんとかであったので、ヒサちゃんと相成ったようです。
犬と一緒に買い求めたる大量のドグフードやらオシッコシーツ諸々を
私の診療所で夕刻まで犬のトリミングを待つ〇〇さんとご自宅まで送りおどける道すがら
ー 先生、私は長生きしてヒサちゃんを見送ってやろうと決めました! ー
ヤレヤレ、これでひと安心!
〇〇さんは今夜はどんな時間を過ごしているんだろう?と床に就いた私です。