私の診療所へ初めてお越しになられる患者さんは、皆さんがとても緊張されているようです。
スリッパに履き替えながら、周りを見渡してキョロキョロされて、
最初は、私にも色々話をしたい事があるのでしょうが、言い出せない様が伝わってきます。
私は笑いながら、決して恐い人間ではありませんが、多少、人相が悪いので損をしておりますと、
毎度の台詞を申し上げて、
ー さて、今日はどうなさいましたか?お困りの点は如何ですか? ー
と、これも毎度の台詞で診察を始めます。
私は精密機械による検査も大切ですが、其れよりももっと、患者さん自身の心に溜まったものを吐き出して頂いて、
治療の方向性を見定める事の方が、今後の治療のためには、より重要であると思っています。
キザな言い方ですが、私は自分で手指の方は器用な方だと思っています。
新しい治療の取得についても、見せて頂いたら直ぐに指の方で動いてくれる方で、あまり苦労した事はありません。
ですが、治療が上手くいかなかった事も当然、経験しております。
その様な経験を振り返って反省してみますと、患者さんからの聞き取りが足らなかったと認めざるを得ないのです。
ですから、私は患者さんからの聞き取りを、とても重要視しています。
2、3回お越しになられたら、皆さんがリラックスされいるようです。
私は緊急性が無い場合には、私が納得するまで治療は始めません。
長い間の経験から、何事にも、
ー 何故?何故?どうして‥? ー
と云う癖がついてしまいました。
たかが歯科と思われるかもしれません。
が、私にとって歯は、十代の後半からズーと追いかけてきた広い空の彼方に浮かぶ雲の様な存在です。
私にとっては、されど歯科。
宮本武蔵の言葉に
【万里一空】
と云うものがあります。
何処まで歩いて行っても、ただ空は広がり続くばかり。剣の道とはその様な空の様な存在である。
と言った処でしょうか?
私にとっての歯も同じです。
私にとっては、毎日が未知との遭遇です。
どうか緊張しないで、私に語って下さい。