日別アーカイブ: 2014年5月16日

医師と患者の距離 その1.

先日、私が眼科へと受診した時のことです。

一軒は高松市内の眼科開業医です。
この医院は、以前私の診療所へ通っていた医療関係者から聞いた処です。

歯科と眼科の違いからなのかと、自分に言い聞かせて、この医院での時間を過ごしました。

雑然とした待合室。
憮然とした形式通りの受付。
殆んどパソコンの画面から眼を離さないで私に話しかける医師。

二件目は県外の開業医です。
この医院は、私なりの勘で行くことにしました。

無論、好き嫌いも在るのかもしれません。

が、一軒目の医院とは全く全てが違っていました。

医療機関と云うのは、程度の大小こそ在れ、病気の人のいくところです。

暖かみが何よりの手当てである事を疑う人は居ないでしょう。

営業での口の上手さ等は、耳障りでしかありません。

本心からのいたわりの所作は、病を癒してくれます。

私がスタッフを辞めさせる事は殆んど在りませんでした。

それでも長い間、開業医をやっていますと、なかにはやむを得ない場合もありました。

何年か前に辞めて貰ったスタッフですが、この子はやたら愛想が良かったです。
患者さんの身なりを誉める! (これには本当に困りました!ハシタナイから止めてとは、いくら私でもハッキリ言えなかった!)
前に勤めていた勤務先の内情を、此方が訊きもしないのに、ヤタラに話す。
(この時に、この子は駄目だと内心では思って、大切な事は見せない様に注意して、辞めさせるタイミングを身構える!)

何故、今このような話をするのかというと、
医療の仕事に携わる人には、向き不向きというのが大いに関係すると思うからです。

この子が以前勤務していた歯科医院では、患者さんが診察室に入られる時には
医師もスタッフも総出で最敬礼の姿勢で向かい入れしていた様です。
医師も患者さんの時計や持ち物に、大いに関心を示して誉めちぎっていたこの医院で教育を受けたならば、
夜の世界では役にたったでしょうが、ただ、この環境で仕事をして来られたと云うのは、そもそもその子自身が
医療の仕事は向いていないと言えるでしょう。

患者さんから観れば、医師と云う立場は、向こう側と云うか、少なくてもこちら側という風には思えないかもしれません。

が、馴れ馴れしくする必要はありませんが、少なくても私共医師は、不謹慎なスタッフが不幸にして紛れ込んだ時には、
それが現状自身のスタッフであっても、その環境から患者さんを守らなければならない場合もあるのです。

目に見えるもの、例えば待合室の整然さなどから始まって、スタッフの態度から医院の清潔感からくる快適さ造りから
目に見えないヶ所全般に渡って、医師たる者は患者さん優先で居るものです。

ただし先の歯科医師の様な優先の有り様は、この医師そのものに医師としての最低限の適応が無いという事を物語っています。

接遇について述べて来ましたが、治療方法の決定はもっと難しいものです。

時と場合によっては、今現在患者さんが希望される治療方法が、本当はその患者さんには不向きである事が医師には解っていた時には、
説明の仕方がデリケートで微妙なものです。

患者さんと医師の信頼関係が築けるには、治療の結果、良い状態にならなければなりませんし、また時間もかかります。

ですから初めての治療で先のようなシチュエーションであれば、御理解頂けると思います。

医師と患者さんの距離感と云うのは、とても難しいものだと思います。