不安感や哀しい気持ちで、
押し潰されそうになった時、
眠ることしか術を知らなかった時がありました。
でも、
眠りは、
必ず眼が覚めるもの。
酒を煽って、
酔いに任せて眠ってみても、
眠りは、
必ず眼が覚めるもの。
そんな長い期間を過ごした後に、
眼が覚めた際に、
ある時、
ふと、
気づいたのです。
悩んでも無駄だと。
哀しんでも、
それは未来永劫には続かないのだと。
ただし、
有頂天になるような至上の幸福に満たされた時間も、
そう長くは続かない。
ソレからは、
ズッと前を向いて歩くようになりました。
10年は先の自分の姿を
より良いモノとして、
イメージを膨らませて、
グイグイと、
前へ進むようになりました。
すると、
人と人との関わり合いの
大切さが、
肌で感じるようになりました。
私の診療所へお越しの患者さん。
私の母校の付属病院へお越しの患者さん。
そして、
母校の上司、同僚、後進たち、
そして、
青春期を母校で学ぶ学生諸君。
ちっぽけな歯科医でしかない私ですから、
私の関わり合いのある世界も、
このように、
ちっちゃな世界でしかありません。
正直、
これで良かったのだと、
胸を撫で下ろしています。
これ以上の大勢の人たちと
関わるキャパシティは、
私にはありません。
私は決して名医ではありません。
でも、
歯との【え・に・し】を
大切に大切に、
雛のかえる直前の卵を
掌の中で包みこむように、
歯科医学を、
私の身体の中で温めて、
大切に触れてきたことだけは、
私の家族、別れた家族ともに
否定されることはないと確信しています。
私は人として生きる。
私は歯科医師として生きる。
関わり合いをもつ方々の幸せを願い、
祈りを捧げながら、
前へ進む。
55歳になって、
ヤット重い腰をあげることにしたのです。
今まで浪費した無駄なエネルギー、
今までの経験から蓄えたエネルギー、
これから思案することで生まれるエネルギー、
それを糧として、
歯の番人としてだけ、
進んで行く姿を
笑って下さい。