自然に


女性の方です。

新居に移られると云うことで、

古い蔵書に困っておられるのだそうな。

聞けば、

私にとっては宝の宝庫。

古本屋に見せれば高く売れると思いますよ。

ところが、

診療に通われる都度に、

大きな袋が破けてしまうように見えます。

先生、この本はお好きでしょ?

私に下さるために、

重い重い荷物を持って来てくださいます。

70過ぎの女性には、

とてもとても大荷物。

本の背表紙を観れば、

やはり宝物。

でも、

私にとっては、

本の価値よりも、

この患者さんのご厚意が尊い宝物です。

しかも、

私の好みを外していません。

よく私をご覧になっていたのでしょう。

医療は人と人との関わり合いです。

患者さんが私に身を委せて下さることに、

ありがとうございます。

患者さんが私を選んで下さったことに、

ありがとうございます。

私を信じて、

治療に通って下さることに、

ありがとうございます。

私は医師足る者は、

患者さんのために生きていると

普通にそう信じてきました。

良い格好する訳ではありません。

昨夜、

息子との電話での会話にて、

歯科大学の合格発表の時に、

歯科医師免許を頂いた時に、

良い歯医者になろうと、

その都度に、

決意した気持ちは、

今でも全く変わってはおりません。

だから、

父は努力など、

無理してはしていないのだと。

歯と関わり合い、

楽しかった!

これからも、

歯と共に生きる。

父の生涯は、

このように単純なモノなんだよ。