考える処


歯科医師と云う仕事柄、

人工物を造ると云う事からは避けられません。

物造りには基本形と云うお手本が必ず在ります。

患者さんの歯の状況は様々なのですが、

それを、

お手本に如何に近づかせることができるかが、

歯科医師の腕の見せ処みたいなものでしょうか?

基本を忠実に取得し、

応用力を拡げ、

お手本に近づかせる。

これが医療行為の基本とも言えましょう。

しかしながら、

悲しいかな、

人工物の定めとして、

完成時が一番綺麗な訳です。

どんなに苦労して造ってみても、

患者さんのお口の中に入った瞬間から、

大きな噛む力なり、

酸アルカリ環境下にて曝され、

食べ物のカスで汚染され、

私の作品は、

日常、叩かれて過ごすのです。

メンテナンスの際など、

久しぶりに再会するわが子を迎える親の気持ちですよ。

何処かに不具合は無いか?

環境と調和していない処は無いか?

ヒヤヒヤしっぱなしです。

人工物と人の身体との調和。

それが私の歯科治療における【考える処】なのです。