せがれが歯の治療のために帰って来ました。
スタッフの宮田君に、
いつものようにお土産を手渡して、
アレ!晋太郎君、日焼けしたね?
女性は流石。
私ら男には無頓着なことに、
よく気がつくのですね。
オープンカー焼けなんです。
親父の細工を信じてくれているのでしょうね。
所詮は素人の組み立てでしかない玩具ですからね。
で、
治療が終わり夕飯でも食べさせてと思っていたら、
墓の掃除に行き、
明日の朝は授業があるからと言って帰っていったのです。
こ1時間ほど経ったでしょうか?
墓からのせがれからの電話で、
つくづく私は怒らなくなったと実感したのです。
墓の移葬に関しては、
物事の大局から、
熟慮し、
跡を引き継ぐせがれとも十分に相談しながら、
私ら親子は、
誠意をもって、
精一杯させて頂き、
また、
この機会によって、
御先祖さまとの距離が大きく縮まったと
喜んでいたのです。
若いエネルギー溢れるせがれが、
怒り、
呆れ果てる、
所作を見つけたようです。
私とせがれには、
無論、
どなたの為さった所作かは、
観てはおりませんが、
瞬時に判ります。
そりゃ、仏さまの方も、
声には決してなりませんが、
眼前に立つせがれに言いつけるに決まっているじゃないですか。
文字通り、
せがれは墓の掃除に精を出し、
帰ってゆきました。
早朝に私も墓地へと出かけ、
不思議なものですね?
何が在ったのか?
瞬時に悟ったのです。
せがれが綺麗にお祀りして帰った軌跡も判りました。
どなたが何を為したかも判りました。
霊なり、
神様、
仏さま、
カトリックでは聖霊と呼ぶのですが、
人の眼には決して見えませんが、
不思議な力が教えて下さるのです。
以前の私だったら、
どうだったでしょうか?
私も歳54。
歯科医師に憧れた少年も既に初老となりました。
残された時間も多くはありません。
良い歯科医師でいたいから、
技術向上への情熱はモチロン、
穏やかな医師でありたいと思うから、
私は自分の感情を抑える知恵を得たのです。
成長を忘れた人でいないために。