診療所の前の菊地寛通りの突き当たりに
【ジュンク堂書店】が出店してからは、
診療が終わった後の楽しみが出来ました。
昔から池袋の【ジュンク堂書店】が好きでした。
ここの店創りに、
個性と自己主張を感じていたからです。
新潟市でも駅前のビルに【ジュンク堂書店】を見つけた時から、
新潟市での余暇の使い方が変わりました。
高松市は四国の田舎街だと。
なぜなら【ジュンク堂書店】が無かったからです。
ですから、
今は高松市も都会になったような気がします。
で、
昨日、
面白いモノと再会したのです。
手に取って、
初版が何時だったか?と。
1969年だとか。
この本を幼い頃に、
産婦人科医の叔父から手渡されたのです。
【絵】が私の幼な心を掴んだのです。
それと、
タイトルと内容が、
チョッピリ背伸びしたような、
大人の、
紳士の、
匂いを感じとったのです。
でなければ、
既に半世紀近く前の記憶など
当てになりませんもの。
大学へ進学するための荷造りの段ボール箱の中の
私にとっての大切な本の中に
この本も入っていた事も鮮明に記憶しています。
内容に心髄した訳ではありません。
なんせ単なるハウツー本でしかありませんから。
が、
私はこの本から放たれる空気が好きでした。
紳士の匂いを感じるからです。
独り暮らしのアパートの書棚に、
この本はずっと同じ位置に居たと思います。
歯科の道に入った私にとっては、
必要な本ではありませんでしたから。
それでも、
高松市へ参ります際の引っ越しの荷物の中には、
確かに、
この本は私と共に。
なぜなら、
産まれたばかりの娘が少し大きくなった時に
娘と一緒に観ようと、
良い絵本のひとつとして考えていたからです。
今は社会人となった娘には、
もしかしたら、
まだ若かった父親の膝の上で、
一緒に眺めた記憶があるかもしれません。
で、
この10数年、
私にとっては怒涛の年月でした。
蔵書の多くも失いました。
その中に、
この本が入っていることも
頭の中に在りました。
ですから、
この本の背表紙が眼中に入った際には
足が停まって、
一瞬、
呼吸も止まったのです。
慌てて、
書棚から引っ張り出して、
頁を開いたのです。
あの本は生きていたのです。
頁の中から、
タンゴやワルツが聴こえてき、
人々が会話を楽しむ空気が放たれてきたのです。
幼い娘たちに贈ろうと。
当時の叔父の表情を思いだし、
つい、
鏡に写った私の顔を観てしまいました。
幼い娘たち。
いつか本物の淑女に育って欲しいものだと。