一子相伝


 京菓子屋の伊織ではないが
私は三枝デンタルオフィスの
眼に触れない部分の
コダワリは
公表しない主義である。

 但し、
私の此のコダワリは 
未だ進化の過程にある。

 昨年在籍してたスタッフが
三枝デンタルオフィスではと
他所で物識り顔で言っても
既に私の診療所の
やり様は
その時既に
変わってしまっている。

 物事を表面的に掴もうとするは
稚拙な行為である。

 物事の本質と云うものは
決して表面からでは
伺う事が
出来ないか、
判る眼を養った者にしか
見えないものである。

 歯のキチガイと云われて
久しいが
此の言葉は
お誉めの言葉として
受け取ろう。

 私には量産車のポルシェの良さは
判らぬが、
ベントレーの美しさには
溜め息が漏れてしまう。

 手作業の美しさの真髄が
感性を揺さぶるのであろう。

 そもそもコダワリとか
美しさの感じ方と云うのは
幼い頃よりの
育った境遇で決まってくると
私は固く信じてる。

 その様な意味では
家業と云うものは
歴然と存在し、
其の形は
矢張、
親だからこそ、
子にだけ伝え得る
一子相伝とも言えよう。