あぁ!歯科治療の限界を実感する


治療終了から12年ほどに経過した患者さんを

前回のメンテナンスから凡そ2年半ブリに拝見しました。

一見、見た目には全く変わっていませんし、

ご本人も全く自覚されずにお過ごしのようでした。

上下左右の奥歯には、

私自身の手によってセラミック修復を行いました。

上下の奥歯の噛み合わせは、咬合紙での印記では変化ありません。

が、!!!

前歯と奥歯の間に、微妙な隙間が出来ているのを発見!

人工の歯の摩耗と天然歯の摩耗には微妙な差が在ります。

長い期間の間に少しずつ、

歯と人工歯が磨り減っていくので、

骨が微妙な差を調整してくれるので一見、

何が生じるのか、判りませんが。

精密に造っているから故に

私らの為せる技術の限界が露見します!

辛いですよ。

こういう時に、私は患者さんに対しては正直に現状をお話ししています。

昨年の事です。

凡そ25年ぶりに、当時の上司と再会しました。

海軍士官を彷彿させるスマートなスラッとした上司の背が

丸くなって居られるのに驚きました。

かく云う私の背も、猫背になったと指摘されます。

此れは歯科医の名誉の老化だと強がりましたが、

其れなりに誠実な歯科医人生を過ごすと

確実にノートルダムのせむし男風の風貌に至ります。

私らの仕事は、伝統工芸品を造る仕事ではありません。

生涯、快適な咀嚼を営んで頂くためのお手伝いをさせて頂く仕事です。

セラミックの冠を新しく造り直すことではなく、

老化と調和した調整と、

最小の侵襲で済むように、

持てる知識をフル作動させて、

でも、こういう時にこの仕事の限界を感じるのです。