歯医者に成りたくて、この道に進んだので、今でも白衣に初めて手を通した時の嬉しさと、照れ臭さを
自分で自分の表情が手に取るように覚えていて懐かしく想うのです。
大学1年の教養課程での生物学実習の時が、私の白衣の第一歩でした。
友人たちと互いを見比べあっていたのが懐かしい。
5年生の夏休み明けから、病院での研修が始まり、
当時、登院服と呼ばれたブルーのハイネックの半袖の歯医者らしい白衣を前にして
何故か誇らしい気持ちになりました。
当時キャンパス内では、登院生は他の学年の学生とは違った意味で憧れの眼差しで扱われていたからです。
医局に入ってからは、其々の医局で白衣の種類も違っていて、それはそれで又、あぁ歯医者になったんだ!という
肩を張った気持ちになったモンです。
開業してからも随分と長い間、デザイン様々な白衣を着ていましたが、
15年ほど前から、突然、白衣を着ることに拒絶の気持ちを持つようになりました。
訳は判りません。
その頃からポロシャツであったり、ボタンダウンのシャツであったり、
で、結局行き着いたのは、ネクタイにスリーピースのベストというイデタチです。
私らの仕事は、凛とした態度で、常に紳士でなければならないという気持ちの顕れが
その大きな理由だったと思います。
心に白衣を着てんだよ!と、白衣を着ない歯医者の私に、その訳を聞いてくる人には
そんなキザな台詞で返していました。
この夏前から、再び私は白衣を着るようになりました。
ー あらっ!先生、白衣なんか着てどうしたの?歯医者さんみたい! ー
と、患者さんたちから驚かれたり、からかわれたり。
ヤッパリ私は、この歯の仕事が好きです。
歯医者になってから今に至るまでの時間は、私にはもう残されてはいないでしょう。
原点に立ち返って、一兵卒の昔に戻った新鮮な心で、素直に歯の仕事に向き合いたいと思います。