インプラント治療再考


 私は既に初老である。
 
 インプラントの臨床を始めて、
既に四半世紀が過ぎ去った。

 オッセオインテグレーション.インプラントの
夜明けの時代であった。

 当時はノーベルファルマ社と云う社名であった
現在のノーベルバイオケア社は、
いよいよ我が国に於いても
本格的にインプラント治療を普及すべく
のり出した時代であった。

 机上だけの講習会では
なかなか、インプラントの勘所が
歯科医師の先生方には
伝わりにくいと云う事であったと認識している。

 実際の患者さんの協力を得た形の
実践トレーニング.コースが開始された。

 本邦に於いて初めての此の企画は
ステップ.バイ.ステップ.コースと
名付けられた。

 担当は、
東京が寺西邦彦先生、
大阪が伊藤雄策先生である。

 翌年から、私も担当となり、
主に地方都市から
オッセオインテグレーション.インプラントの普及活動を
開始した。

 私共は供に、
ブローネマルク博士の精神を守る医療の学徒である。

 人という生体組織を貴としむ者である。

 昨今のインプラント治療の現状を憂いている。

 私はインプラント治療に於いては
純チタン製のインプラントしか用いない。

 最近流行りの
チタン合金のインプラントは使用しない。

 確かに合金は、機的物性に於いて優れた数値を有している。
が、細胞毒性がある事を忘れてはならぬ。

 生体の中に埋め込んでしまう異物である。

 若い歯科医は、
もう一度、
ブローネマルク博士とアルブレックソン博士の
研究論文を熟読されるがよかろう。