旧くても確かな治療


 台風が過ぎ去り、
秋の気配が漂い始めた東雲に
マリリンの散歩を
早めに終わらせて
診療所へと急いだ。

 昨日は荒れ狂う天候のなか、
歯科衛生士の宮田君が
橋を渡って関西迄
歯科矯正に出掛けて行ったが、
交通機関の乱れで
さぞかし
くたびれたであろうと、
朝一番の手術の準備を
代わってしておこうと
思い立ったのである。

 時代はデジタル化に
突き進んでいるが、
私は未だアナログ派である。

 CTは仕方ないが、
その他のレントゲン写真の現像は
あくまでも、
現像液と定着液を使い、
其れも、
自動現像機ではなく
自らの手現像を
貫いている。

 皆一様に驚くが、
コダックのフィルムには
此の方法が一番合っている。

 加工の出来る、
見えすぎるデジタルレントゲン写真は
却って、
誤診の原因となる時がある。

 今は亡き歯内治療の大家であった
浅見保子先生の御研究の結果通りの
現像方法が
歯の仕事には
最適であると確信している。

 歯内治療の言葉序でに
私の歯内治療も
古典的な手法である。

 ラバーダム防湿に拘り、
機械的清掃拡大はハンドインストゥルメントにて、
化学的清掃拡大も伝統的手段である。
根管充填も、
当然の事ながら
滅菌練板を使って、
ガッタパーチャポイントを
カャナルスでもってである。

 此の何十年、
様々な新手法が紹介されてきたが
伝統的手段を
凌駕出来る核心的方法でないことが
次々と
目新しい方法が
生まれてくる原因である。

 臨床家は
浮気せず、
確たる技術を身に付ける
謙虚さと、
毎日の積み重ねが
肝要である。

 朝一番に交換した
現像液の温度が
そろそろ安定したであろう。

 さてと、サーモスタットの目盛を
調整するとしよう。