私が大学1年生の頃です。
本試験1ヶ月前ってことで、
歯学生は、必死になって勉強していました。
特に新入生は、
始めての本試験ですから、
皆が不安な訳です。
先輩から情報を提供して頂いたり、
出回ったコピーを収集したり。
で、
ある時、
同級生であった〇〇君のアパートの前を通っていたら、
けたたましい木魚を叩く音に合わせた般若心経が聞こえてきます。
???
馬鹿な私は自転車を置いて、
〇〇君の部屋の呼び鈴を押したのです。
長が~い・数珠を頸にグルグル巻の姿で、
玄関口から顔を出す〇〇君。
お前・何だ・その格好?
キョトンとする私の手を引き、
部屋に案内されて、
更に私は仰け反ったのです。
部屋の壁を背中にした、
大きな大きな不動明王さまの御像が鎮座されているでは・ありませんか!
なんでも故郷に暮らす母上が、
ひとり暮らしを始めた息子を案じ、
送ってきた・ありがたい仏様なんだ・とか。
煌々と蝋燭に火を灯し、
もくもくと・立ち上る香の煙。
そのド真ん前に敷いた座布団に腰を下ろして、
さぁ・三枝も・一緒に祈願・祈念しよう!
で、
ポン・ポン・ポン・ポン・
チ~ン・
般若は・ら・み・た・心経~。
観自在菩薩~。
ぼ~じそわか・般若心経~。
チ~ン。
では・ご一緒に。
の~まく・さんまんだ~ば・ざらだ・せんだ~・まかりょしゃな・そわたや・かんまん・
マヌケな私も合掌し、
般若心経3巻、序でにお不動さまの御真言を6回、
ご一緒したのです。
振り向いた〇〇君。
三枝っ・もうこれで進級は確実やで!
私の方はお蔭様で、
ストレートで6年まで進級し大学院へと進学することができました。
当の〇〇君。
途中で何度も何度も・落第し、
医員となった私にチェックのための印鑑を押して貰わねばならない、
学生生活のプロフェッショナルとなったのです。
運も大切ですが、
常日頃の勉強は、
学問の世界では、
仏様のお力を借りる処では・ナインじゃないかと。
でも、ユニークな友人でした。
そんな彼ですが、
今では地元でシッカリと頑張っているそうな。
何故・知ってる?
先日、
羽田空港の主発ロビーで、
不意に後ろから、
声をかけられたのが・彼。
短い時間でしたが、
学生時代に戻って、
互いに・互いが、
聞かされたくない・恥ずかしい話題で盛り上がったのでした。