やっぱり、
患者さんたちは
気づいていたのです。
ホールの登り階段の手摺から
備え付けの台、
診療椅子の隅々まで
ピカピカ✨に光っているほどに。
お掃除のオバチャンのお陰です。
オバチャンと云っても、
まだ72歳の活き活きしたお綺麗な方です。
私が若い時分からの患者さんでした。
御商売をお閉めになり、
6歳年長の御亭主と、
お子さんに恵まれなかったので、
お二人で仲睦まじく過ごされていたのです。
が、
数年前、
オバチャンを病魔が襲いました。
何度か手術を受け、
スッカリ、
オバチャンは意気消沈したのです。
メンテナンスの期間を短くして、
口腔のクリーニングはそこそこに、
オバチャンの不安な気持ちを聴く、
オバチャンの体調を聴く、
オバチャンの食事の内容を聴く。
それに徹したのです。
2年ほどは、
同じような状況だったと思います。
で、
コレでは、
オバチャンは鬱になると判断した私は、
オバチャンに診療所のお掃除人を依頼したのです。
オバチャンは私の患者さんですから、
私の診療所の方針は既に20年も経験済みの玄人です。
全てが患者さんのために。
明るくなられましたよ。
人は誰かのためにお役にたつ事を自覚すれば強くなる。
そんな言葉を思い出しました。
最近、お越しになられた患者さんとの会話には、
横耳はさんだ私は吹き出しそうになります。
先生は忙しいんですよ。
いつも診療の合間で誰それからお電話でね。
難しい治療の方ばかりの合間ですからね。
ご飯も召し上がれないんですよ。
年とられて丸くなられたんですよ。
いえいえ、
私なんか今でも先生のことは
恐いですもの。
昔なんか、ソレはソレは。
でも、
患者さんが多いんです。
ハッキリモノを仰いますけど、
困った患者さんには、
ソレはソレは親身に手当てされますから。
アレは恐いんではないんですよ。
ヤッパリ仕事の内容なんでしょうか?
緊張してピリピリされてるんです。
廊下の陰で、
オバチャンの話しを聞くに、
あぁ、女性の口ってのは、
でも、
私は女性の歯の治療がほとんどなんですね。
スタッフも代わり、
随分と雰囲気も変わりました。
しかし、
私はピリピリしてるんでしょうか。
心外だなぁ。
自分では随分と無理して丸く演じてるんです。