コツコツと


先のブログでお見せしたような治療は、

小さな、小さな、

観察力、

手先の動き、

身体への配慮、

それらの積み重ねの集合体です。

外科はバサッバサッと、

と云うのは危険極まりない暴挙です。

歯科治療の性質柄、

メスを持たない治療でも、

歯の治療は本来は外科的要素が強いのです。

だって、

手先を絶対に使う治療ですから。

私は歯科医師免許を頂戴してから直ぐに

母校である日本歯科大学の大学院へと進みました。

専攻は【歯科保存学】です。

大学院は学生の扱いを受けません。

医局の【下っ端】

医局の先輩方のお昼の出前の要望聞きから、

白衣のクリーニングの持ち込み、

ゴミ箱の中の運搬、

基礎研究には無くてはならない【牛の歯】を

屠殺所へと通い、

其処で、

ご厚意の返礼として、

それなりのお手伝いをし、

命との引き換えで研究に捧げて下さった牛に感謝しつつ、

歯を医局に持ち帰り、

そこからが、

また大変なのです。

大きな牛の顎の骨から、

傷をつけないように、

細心の配慮で、

人の何十倍もある大きな牛の歯の抜歯です。

くたくたでした。

キレイに洗浄して冷凍庫に保管するまで、

その日は何もできません。

上の医局の先生方の研究の手伝いから、

手順の実際を学びました。

ビーカーひとつ洗浄して乾燥するまで、

気を抜けなかったですよ。

乾いた際にビーカーの表面に白濁の天でも視えたら、

全部、やり直しでしたもの。

医局には大勢の先生方が居られましたから、

なかには、

私のことが気に食わないと思って居られる方も。

それは厳しかったですね。

ただ辛抱は苦にはなりませんでした。

私は夢が在りましたから。

それとオモシロイものですよ。

嫌な奴、

煩い奴、

奴って云うのもハシタナイですが、

イチイチ文句ばかり付けてくる方からは、

治療技術、

知識、

全ての点において、

学ぶ処は皆無でした。

キチンと仕事に向き合って居られる先生は、

他人ごとには無関心でしたし、

医療人の心をお持ちでしたから、

低次元な嫌がらせや苛めなど、

全く頭になかったと思います。

下が育てば医局の戦力になる訳で、

そういう意味で、

親切に指導して下さったように思います。

研究や論文をシッカリとヤられる先生は、

当然、

知識も豊富ですし、

仕事も丁寧でした。

現在、保存学講座の教授である新海航一先生は、

当時は講師をお務めになられて居られましたが、

寡黙に、

医局ではデスクに向かい、

立ったと思えば、

診療室で診療を、

医局に居ないと思えば、

研究室で実験をと云うくらいに、

医局で雑談に興じる先生方が多いなか、

黙々とお仕事されておられました。

やはり教授になられましたよ。

現在は大学院長をお務めになられていらっしゃる。

歯科医師の仕事はエンターテイナーではありません。

細かい、細かい仕事です。

そういうことを、

私は良い見本が居て下さったと、

本当に感謝しています。

コツコツと。