勘働き


先日、大学生の息子と鮨屋のカウンターに腰掛けていました。

どこか良い店がないかねぇ?

と、独り言の多くなった私に息子が問います。

父ちゃんの云う良い店ってどんなん?

盃を手に、

そうだなぁ?

チョッとした小路のなかの小さな店でな!

縄暖簾をくぐって引き戸をチョッと引いて、

中の様子を眺めたら、

もう10人も入ればいっぱいって程度のカウンターだけの店で、

そこに割烹着を着た女将がコッチを振り向いて

「 あら、先生、いらっしゃいませ 」

で、

腰をおろしたら、

熱つーいギュッと搾ったオシボリが出てな、

「 こんなモノしかありませんが、お口にお合いになりますかしら」

ってな感じで小鉢がサッと。

「 先生、先ずはお1つどうぞ 」

父ちゃんは普段は手酌だがな、

この女将が【はぐれ刑事純情派】に出てくる

真屋あずさみたいなイイ女だったら、

注いで貰うわな!

なっ、コレが良い店じゃ!

息子ですか?

真屋あずさは居らんだろね、

まぁ、良いとこ【あき竹城】でしょ!

爆笑あるいはアザケ笑いの息子でした。

私も同感です。

だから私は外食しないのです。

鮨屋の帰りに、

通りの喫茶の灯りから中の様子がボンヤリと見えました。

「 晋太郎、チョコッと入ってみるべ?」

良い店って在るものだねぇ!

と、大いに満足し、

水だし珈琲の準備をする女給を眺めてつくづく感心する父親に、

「 父ちゃんの勘働きって凄いね!」