私の選んだ仕事


昨日の新患の女性患者さんに接してから、

私は途方にくれています。

なんとか快適な環境と健康を取り戻して頂きたいと。

お口のなかの残り少なくなった歯は、

暴れていました。

当然、歯科医師の手が介入した痕跡、

否、

考えなしに造られた大掛かりな治療痕と云うべきでしょう。

噛む位置も定まってはいません。

帰りたくても居場所のない家庭と、

不条理な社会に揉まれる哀れなサラリーマンの姿のような

追い込まれた状況下の口腔でした。

治療の方法は星の数ほど在ります。

初対面の私が、

患者さんの先々まで予知しなければなりません。

私は患者さんの口腔の状況を、

瞬時に瞳孔のシャッターボタンを押して、

記憶できる特技が在ります。

その画像とレントゲン所見を前に、

途方にくれています。

どの治療手順を選択すべきか?

責任の重さに、

身が潰れそうな想いです。

それが私の選んだ仕事です。