昔のことは


西洋化した昨今ですが、

私の幼い頃は未だ戦後の匂いが残っていた様に思います。

アイスクリームなどは夏だけの特別な味でしたし、

バナナは高級品でしたもの。

風呂に入るのも、

木箱を斧で叩き壊して薪として、

五右衛門風呂を焚いていました。

院長室の机に向かって休憩をとる際に、

昔の事をしばしば思い出す様になりました。

笑って下さい。

西洋料理らしい西洋料理を初めて食した時の事を

今でも鮮明に覚えています。

小学2年の夏の事です。

今の東京プリンスホテルの2階のフレンチレストランです。

うら若き女性が大きな大きなハープを抱くように

演奏していた姿が強烈でした。

もっと強烈に印象的だったのが、

銀の蓋の中から姿を表した

大きな大きなスモークサーモンの塊です。

給事の男性が手にした変形のナイフで、

薄す~く、薄すーく、

スライスされるスモークサーモンの、

なんと美しいことか!

今でも私はスモークサーモンを高級品の代名詞のように

思ってい、

息子から笑われているのですよ。

私の墓地にスモークサーモンをお供えしてくれるのだそうな。

後免こうむると返事しています。

蝿に集られて嫌ですから。

テーブルに並んでフォークとナイフに、

背筋を伸ばしたことも覚えています。

スープの美味しかったこと。

フォークで口に運んだ肉片も、

茹で上がった温野菜も、

デザートと紅茶の味も、

その後、口にしたどの料理よりも

美味しかったと思います。

子供の頃の経験ほど

【かけがえのないモノ】だと思っています。

ですから、

子供たちには無理してでも、

いろんな経験させて遣りたいと思ってきました。

親の想いが、

その様に伝わっているのかは判りませんが、

私は、それでは良いと思っています。

残り人生、

どんな感動させて貰えるモノか?

そんな凄いことって在るんでしょうか?