私が母校の教壇に戻って10年になろうかと思います。
10年と言えば我が身を振り返り、
歯科大に入学してから6年の教育を授けて頂き、
歯科医師免許を頂戴し、
4年の大学院での研究と臨床指導を受け、
歯学博士を授与された期間に相当します。
【ひとかどの歯科医師】になった期間とも言えましょう。
ですから、
当時、歯学の右も左も判らないフレッシュな学生諸君も
今では【ひとかどの歯科医師】に育ったようです。
俗に云う【教え子】から、
突然に私のホームページの問い合わせフォームから
メールを頂戴したり、
診療所の電話に直接にご連絡を頂く機会も
度重なりました。
そんなこんなで、
イッパシの歯科医師へと育った彼らとの
再会の機会も増えて、
実際の臨床に携わっている彼らへの
治療の具体的な方法なり、考え方を
私なりの経験を語る機会が増えたのは、
自然の道理かもしれません。
第1年時に学生諸君への私の特別講義である
【素晴らしい仕事.歯科治療】というタイトルの
私の戯れ言を、
卒業してから思い出したとの言葉を
しばしば頂戴します。
今は歯科医師過剰にて、
治療の上達に苦心するよりも、
経営的に苦労が絶えない歯科医師の現状ですが、
そんな時に、
彼らからは【ぶれず】に歯科治療にのみ専念する私の姿が、
支えになっていると聞く度に、
逆に、
その言葉が私の日々の大きな原動力となっていると、
これまた正直に申し上げますが、
ただただ歯科治療の在り方に工夫する自分を造る
やせ我慢の源にもなっているのです。
教え、教えられることが教育の真の姿とも言えましょう。
世間的に観れば、
歯科医師の苦しみなど実感出来ないでしょうが、
プロフェッショナルとは、
その様な甘いモノではありません。
厳しい【イバラの道】が仕事道と言えましょう。
他人との競争を意識してはなりません。
もっともっと患者さんへ貢献できるようにと、
知識を深め、
技術の研鑽を積み重ね、
鋭い観察眼を養い、
人を診る仕事ですから、
自己を圧し殺してでも、
患者さんやスタッフを包み込む包容力を、
無理してでも、
そう見せるやせ我慢に尽きるのが、
私ら歯科医師の職責だと、
人の寿命の後半戦にドップリと浸かった
この歳になって、
気づいたのですから、
本当に私は、
大きく遠回りしたように思います。
厳しい道のりでしたが、
それでも私は声を大にして申しましょう。
歯科治療は素晴らしい仕事だと。